STAP 教と「説教サイト」

no extension

ちょっと訳あって昔の自分の記事を掘り返してたら懐かしいものを見つけた。

多分,件の研究者は理研内で失脚後独立して,数年後には(「水が日本語を理解する」とか「ゲームをやると脳がいかれる」とか言ってた人みたいに)「私は波動で万能細胞を作った」とか言って本を出して,小学校の道徳の時間に紹介されるですよ。めでたしめでたし(笑)
via 紅塵の巷の錬金術師

もちろん冗談で書いたのだが,なんだか着々と実現してるっぽくて怖いよ,おじさんは(笑)

学術レベルの STAP 論争については,ちょうど1年前に当のハーバード大学医学大学院(Harvard Medical School)によってトドメが刺されている。

ここで

“Ultimately, we need to have more checks and balances in science,” said Daley, who is also an investigator of the Howard Hughes Medical Institute. “Incentives in the system are so stacked toward being productive and publishing and getting grants that it can lead even very well-intentioned people into too easily accepting their own cognitive biases.”
via The Final Word on STAP | HMS

とあるように,真っ当な研究者でも簡単に認知バイアスの罠に陥ってしまうことがある。 これを避けるためにはもっと “checks and balances” が必要だよね,というよくある話でオチがついた。

一方の日本では(今年の春だったかな)特許申請がどうとかドイツで STAP 細胞が再現されたとか今だに騒いでるようで,私の Facebook の TL にもちょろちょろ流れてきていた。

ちなみに特許申請が云々というのはこの辺の話だろうか。

ここでも書かれている通り特許申請の有無と STAP 細胞存在の有無は基本的に関係がない。 しかも STAP 細胞は再現されていないのだから(少なくとも日本や米国などでは)申請は通らないだろう。 まっ,通ったとしても誰も再現できないのだから意味ないけど。

で,ドイツで STAP 細胞が再現された云々ってのはこの論文のことを指すらしい。

でもこの論文には STAP 細胞が再現されたとは一言も書かれてない。 ちょろんと眺めてみれば Highlights に

T-lymphocytes' responses to acidic stress were irrelevant to OCT4A or OCT4B.
via Modified STAP conditions facilitate bivalent fate decision between pluripotency and apoptosis in Jurkat T-lymphocytes

とキッパリ書かれているし Abstract でも

In general, acidic treatment led to an apoptotic condition for Jurkat T-lymphocytes, which occurred independent of OCT4 induction.
via Modified STAP conditions facilitate bivalent fate decision between pluripotency and apoptosis in Jurkat T-lymphocytes

と締めくくられている。 なんでこれで「STAP 細胞が再現された」という騒ぎになるのかよく分からん。

そういえば『神道入門』では宗教や信仰についてマスメディアの影響を指摘している。

宗教団体がテレビに登場することに対しては厳しい倫理コードを示すテレビ局であるが、こうした霊能者たちには、かなり自由に番組を開放しているように見える。教団宗教には警戒するが、呪術的行為や観念には極めて寛容という原則をみてとれる。(p.263)
via 神道入門 日本人にとって神とは何か

おそらく「そういう人たち」というのは「芸人」とさして変わらないとみなされているのだろう。 テレビで行う呪術的行為を芸の一種と見なしているわけだ。 おそらく STAP 論争もメディアから見れば「バラエティ枠」なんだと思う。

そういや10年近く前に「あるある某」とかいう捏造番組があったな。

そもそも「メディアリテラシー」なるものが高い人は「あるある...」なんか見ない。それを見るのは(「あるある...」をネタとして楽しんでいる人を除けば)「メディアリテラシー」が低い人なのだ。つまり包含関係が逆。「視聴者が無批判に番組情報を受け入れる」のではなく「無批判に番組情報を受け入れる」タイプの視聴者が「あるある...」のような説教番組を見るのである。
via 「テレビという共同体」

もうテレビ自体見なくなったのですっかり忘れていたが,私が「説教番組」と名付けたのも,その番組スタイルがいかにも「説教」だったからだ。 日本の STAP 論争がカルトっぽく見えてしまうのもネット上のメディアが「説教番組」のスタイルを取り入れていっているのだろう。

ちうわけで,この手のアレな情報をいかにもそれらしく「説教」のように垂れ流すサイトをこれから「説教サイト」と呼ぶことにする。

photo
神道入門 日本人にとって神とは何か (平凡社新書)
井上 順孝
平凡社 2006-01-12
評価

国家が個人資産を奪う日 (平凡社新書 681) 競争社会アメリカ (中公新書) 日本の15大同族企業 (平凡社新書 516) 現代政治学の名著 (中公新書) 哲学マップ (ちくま新書)

Kindle 版登場。日本の神道の系譜が網羅的に書かれている。

reviewed by Spiegel on 2015/03/22 (powered by G-Tools)