紙芝居用の簡易サーバを書く【Go 1.16 版】
ずいぶん前に「紙芝居用の簡易 Web サーバを Go 言語で書く」という記事を書いたが,これで作ったコードは任意のディレクトリをドキュメント・ルートにできるという結構ヤバい代物である。
ところで Go 1.16 リリースで真っ先に思ったのは「これで安全に紙芝居ができるぢゃん」だった。
Go 1.16 で追加された embed
および io/fs
標準パッケージを使えば,サードパーティの外部パッケージを使わずとも,簡単に「紙芝居」が作れる。
さっそく試してみよう。 こんな感じかな。
package main
import (
"embed"
"fmt"
"net/http"
"os"
)
//go:embed html
var assets embed.FS
func main() {
addr := "localhost:3000"
fmt.Printf("Open http://%s/\n", addr)
fmt.Println("Press ctrl+c to stop")
http.Handle("/", http.FileServer(http.FS(assets)))
if err := http.ListenAndServe(addr, nil); err != nil {
fmt.Fprintln(os.Stderr, err)
}
}
ここで //go:embed
ディレクティブがコンパイラに html
の埋め込みを指示している部分である。
html
は実在のディレクトリで,以下の内容の index.html
ファイルを格納している1。
<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
<title>Hello</title>
</head>
<body>
<p>Hello World!</p>
</body>
</html>
embed
.FS
型のインスタンスはそのままでは http
.FileSystem
型として使えないので http
.FS()
関数で http
.FileSystem
型に適合するよう変換している。
説明はこのくらいにして,とりあえず動かしてみよう。
$ go run sample1.go
Open http://localhost:3000/
Press ctrl+c to stop
これでブラウザで http://localhost:3000/
にアクセスしてみると。
ありゃりゃーん。 ちょっと切ない感じになってしまった。
html
ディレクトリをドキュメント・ルートに出来ないかな,と思って色々眺めてたら fs
.Sub()
関数が使えるっぽい。
というわけで,さきほどのコードを少し書き換える。
package main
import (
"embed"
"fmt"
"io/fs"
"net/http"
"os"
)
//go:embed html
var assets embed.FS
func main() {
addr := "localhost:3000"
fmt.Printf("Open http://%s/\n", addr)
fmt.Println("Press ctrl+c to stop")
root, _ := fs.Sub(assets, "html")
http.Handle("/", http.FileServer(http.FS(root)))
if err := http.ListenAndServe(addr, nil); err != nil {
fmt.Fprintln(os.Stderr, err)
}
}
エラー処理をサボっているがご容赦。 では,このコードを起動してみる。
$ go run sample2.go
Open http://localhost:3000/
Press ctrl+c to stop
ブラウザでアクセスしてみると。
よーし,うむうむ,よーし。
これで安全に紙芝居ができるな。
go build
でシングル・バイナリにまとめれば持ち運びもOK(笑)
//go:embed
ディレクティブはかなり便利に使えるようで
package main
import (
_ "embed"
"fmt"
)
//go:embed html/index.html
var hello string
func main() {
fmt.Println(hello)
}
てな感じに,ファイル内容を []byte
または string
型のデータに展開してくれる。
$ go run sample3.go
<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
<title>Hello</title>
</head>
<body>
<p>Hello World!</p>
</body>
</html>
こりゃあ,ひょっとしてテストが捗るねぇ。
データの読み込みを //go:embed
ディレクティブで簡略化できるもんね。
ブックマーク
参考図書
- プログラミング言語Go (ADDISON-WESLEY PROFESSIONAL COMPUTING SERIES)
- Alan A.A. Donovan (著), Brian W. Kernighan (著), 柴田 芳樹 (翻訳)
- 丸善出版 2016-06-20
- 単行本(ソフトカバー)
- 4621300253 (ASIN), 9784621300251 (EAN), 4621300253 (ISBN), 9784621300251 (ISBN)
- 評価
著者のひとりは(あの「バイブル」とも呼ばれる)通称 “K&R” の K のほうである。この本は Go 言語の教科書と言ってもいいだろう。
-
//go:embed
ディレクティブはあくまでもファイルに対してディレクトリ構造ごと埋め込むものなので,空のディレクトリは埋め込めない。 ↩︎