Go 1.13 と 1.14 (Go 2 へ向けて)
8月に正式リリースされる Go 1.13 の主な機能
Go 1.13 のベータ版が登場したようだ。 リリースノートも併せて公開されている。
Go 1.13 では数値のリテラル表現(2進数表現や浮動小数点数の16進数表現)など色々と重要な機能追加があるが,主なものは以下の通り。
errors パッケージへの機能追加
以前に紹介した golang.org/x/xerrors
の機能が正式に errors
パッケージに組み込まれるようだ。
golang.org/x/xerrors
の機能をほぼ踏襲しているみたいなので,既に golang.org/x/xerrors
を使っている人は僅かな変更で対応できるだろう。
環境変数 GO111MODULE の変更
環境変数 GO111MODULE
の値が auto
の際の挙動が変わるようだ。
具体的には
ということで GOPATH
以下にあるソースコードでも go.mod
ファイルがあればモジュール対応モードで管理が可能なようだ。
GOPRIVATE, GOPROXY/GONOPROXY および GOSUMDB/GONOSUMDB
以前
を紹介したが,この機能を制御するために GOPRIVATE
, GOPROXY
/GONOPROXY
および GOSUMDB
/GONOSUMDB
各環境変数が追加される。
GOPROXY
の既定値は https://proxy.golang.org,direct
となっている。
これを無効にする場合は direct
のみをセットすればよい。
ちなみに 1.13 からは go env
コマンドが拡張され
$ go env -w GOPROXY=direct
という感じに設定できるらしい。 これでシステムの環境変数を汚さずに済む(笑)
GOSUMDB
については
ということらしい。
また GOPRIVATE
環境変数を使えばミラーリングやチェックサム・データベースの対象から外すモジュールを指定できるようだ。
Google はミラーリング・サービスとして proxy.golang.org
を,データベース・サービスとして sum.golang.org
を提供しているが,個人的には
なので
$ go env -w GOPROXY=direct
$ go env -w GOSUMDB=off
として無効にするのがいいかな。 まぁ,8月に正式版が出てから様子を見て方針を決めればいいか。
Go 1.14 へ向けて: try() 組み込み関数によるエラー検査
以下のブログ記事では Go 1.14 および最終的な Go 2 へ向けての方針が書かれている。
この中で注目したいのは Go 1.14 で追加されるというエラー検査機能だ。
エラーの検査については以前
において check
式(check
expression)と handle
構文(handle
statement)の提案を紹介したが,最終的には try()
組み込み関数を導入することにしたようだ。
具体的には
func foo() (T1, T2, ..., Tn, error) { ... }
という関数に対して
v1, v2, ..., vn := try(foo())
のように記述できる。
try()
組み込み関数は foo()
関数の返り値の error
値を見て nil
でなければ値をセットして return
する。
概念的にはこんな感じ
var err error
v1, v2, ..., vn, te := foo()
if te != nil {
err = te
return
}
セットされた error
は defer
構文で捕まえてまとめて処理できる。
func bar() (err error) {
defer func() {
if err != nil {
fmt.Fprintln(os.Stderr, err)
}
}()
v1, v2, ..., vn, := try(foo())
...
return
}
実際のコードで考えてみよう。
たとえばファイルのコピーを行う関数 copyFile()
は
func copyFile(src, dst string) error {
r, err := os.Open(src)
if err != nil {
return err
}
defer r.Close()
w, err := os.Create(dst)
if err != nil {
return err
}
defer w.Close()
if _, err := io.Copy(w, r); err != nil {
return err
}
return nil
}
try()
組み込み関数と defer
構文を使って以下のように書き直せる。
func copyFile(src, dst string) (err error) {
defer func() {
if err != nil {
err = fmt.Errorf("copyFile %s %s: %v", src, dst, err)
}
}()
r := try(os.Open(src))
defer r.Close()
w := try(os.Create(dst))
defer w.Close()
try(io.Copy(w, r))
return nil
}
try()
組み込み関数を導入することにより,演算子や構文を追加することなく後方互換性を確保しつつ仕様を拡張できるというのは大きい。
来年の冬が楽しみだなぁ。
ブックマーク
参考図書
- プログラミング言語Go (ADDISON-WESLEY PROFESSIONAL COMPUTING SERIES)
- Alan A.A. Donovan (著), Brian W. Kernighan (著), 柴田 芳樹 (翻訳)
- 丸善出版 2016-06-20
- 単行本(ソフトカバー)
- 4621300253 (ASIN), 9784621300251 (EAN), 4621300253 (ISBN), 9784621300251 (ISBN)
- 評価
著者のひとりは(あの「バイブル」とも呼ばれる)通称 “K&R” の K のほうである。この本は Go 言語の教科書と言ってもいいだろう。