Libgcrypt 1.9 系へのアップグレードはちょっと待ちなはれ
なんかメチャメチャ忙しい。 この前うっかり休日出勤したら,その後の体調が急落してしまった。 他のプロジェクトメンバにはホンマに申し訳ないが,祝日と休日(と土曜日)はカレンダー通り休ませてもらうことにした。 歳をとるとあちこちガタが来るのよ。 マジすんません 🙇
先月の話で恐縮だが,ついに 1.9 系の Libgcrypt が安定版としてリリースされた。
これによると
とのことで,現行の 1.8 系との後方互換性を図りつつ,パフォーマンス改善やアルゴリズム追加等が行われているようだ。 詳しくは以下の通り。
現行の 1.8 系は LTS バージョンという位置付けで今後もサポートされるようだ。 また GnuPG 2.2 系も併せて LTS の位置付けになっている。 おそらく 2.3 系の一般リリースが近いのであろう。
Libgcrypt は汎用の暗号ライブラリだが GnuPG 以外で使っている事例を寡聞にして知らない。 ほとんどのユーザはそうだと思うが GnuPG 2.2 系のみに Libgcrypt を使っているのなら今すぐ 1.9 系にアップグレードする必要はない。 しばらくは推移を見守っていたほうがいいだろう。 当分は頻繁なアップデートが行われるだろうし,重大なバグや脆弱性については 1.8 系にもフィードバックされる筈である1。
なお Libgcrypt 1.9.0 でさっそく脆弱性が見つかって 1.9.1 がリリースされている。
既に Libgcrypt 1.9.0 を運用している場合はアップデートしませう。
アップデートは計画的に
最近の GnuPG 関連のアップデート状況は以下の通り。
# | パッケージ名 | バージョン | 公開日 | 更新 |
---|---|---|---|---|
1 | Libgpg-error | 1.41 | 2020-12-21 | |
2a | Libgcrypt (LTS) | 1.8.7 | 2020-10-23 | |
2b | Libgcrypt | 1.9.1 | 2021-01-29 | |
3 | Libassuan | 2.5.4 | 2020-10-23 | |
4 | Libksba | 1.5.0 | 2020-11-18 | |
5 | nPth | 1.6 | 2018-07-16 | |
6 | ntbTLS | 0.2.0 | 2020-08-27 | |
7 | GnuPG (LTS) | 2.2.27 | 2021-01-11 |
脆弱性が公表されると碌に中身も見ずに「すぐにアップデートしろ」みたいなことを言う馬鹿メディアもあるようだが,20年前の牧歌的な時代ならともかく今は可用性(availability)も明確にセキュリティ・リスクとして認知されているんだから,考えなしにアップデートできるわけ無いだろ! セキュリティ部品はシステム規模が大きくなる程いざというときの影響が大きい。 勿論いつまでも放置するのは論外だが。
というわけで,アップデートは計画的に。
ブックマーク
参考図書
- 暗号化 プライバシーを救った反乱者たち
- スティーブン・レビー (著), 斉藤 隆央 (翻訳)
- 紀伊國屋書店 2002-02-16
- 単行本
- 4314009071 (ASIN), 9784314009072 (EAN), 4314009071 (ISBN)
- 評価
20世紀末,暗号技術の世界で何があったのか。知りたかったらこちらを読むべし!
- 暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス
- 結城 浩 (著)
- SBクリエイティブ 2015-08-25 (Release 2015-09-17)
- Kindle版
- B015643CPE (ASIN)
- 評価
SHA-3 や Bitcoin/Blockchain など新しい知見や技術要素を大幅追加。暗号技術を使うだけならこれ1冊でとりあえず無問題。