映画『火星の人』を観た

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最初に。 ネタバレを多分に含むので閲覧注意です。


いやぁ。 誰だって「オデッセイ」なんてセンス皆無なタイトルの映画なんか見ようと思わないよね。 しかも前宣伝があまりに酷くて完全にスルーしていた私を誰が責められよう(笑) お涙頂戴のゴミ映画なんか要らないのさ。

でも他の人の感想を見ると,どうもちゃんとした SF 映画らしい。 あと Facebook で天文研時代の先輩が絶賛しておられたので,個人番号カードをもらったついでに観に行くことにした。

広島市内で『火星の人』(敢えてそう言うが)を上映しているところはいくつかあったが,「八丁座」でもやっていたのは僥倖であった。 八丁座は以前も大絶賛したサロンシネマ系列の箱で,名前の通り広島市の中心街にある。 ここではコーラやポップコーンといったジャンクフードは売っていない。 オススメは自家製レモネードだ。 座席も足元もゆったりしているので多少のデブでも大丈夫(関取クラスの人は分からないがw)。 なによりここは「映画泥棒」の広告がない! 狭い場所に詰め込むだけ詰め込んでそのくせ客を泥棒扱いする悪意満載な郊外型シネコンとは大違い。

平日に観に行ったので客は少なかろうと思ったのだが,意外に多くてビックリした。 注目されているのだろうか,この映画。

ひとつ誤算だったのは,この映画が面白かったことだ。 いや,マジで何度も吹き出しそうになった。 ワトニー君が水素を爆発させて吹っ飛んだシーンとか,不覚にも声に出して笑ってしまい慌てて口を塞いだほどだ。 周りから見たらさぞかし「不審者」だったろう。 ごめんなさい。

上映は 2D 字幕版だったが(くたばれ! 3D),比較的聞き取りやすい英語だったのはよかった。 私は英語不得手でヒアリング能力も壊滅的だが,それでも 2/3 くらいは聞き取れた(あとは字幕で補完)。 多分モノローグが多くて短めのセンテンスになってるからかもしれない。 じゃがいもの芽に “Hello there” と呼びかけるシーンはちょっとほっこりしてしまったよ。 最近の流行りなのか,早口の長台詞は私のような人間はマジで困る。 吹き替え版を見ればいいのかもしれないが,吹き替えもピンきりだからなぁ。

実はこの作品に原作があることも知らなかった。 笑わないでおくれ。 それすら知らないほどスルーしてたのである。 原作があることは,これもやっぱり天文研時代の先輩に教えていただいた。 ので,映画館を出たあとにソッコーで Kindle 版をポチって貪り読んだ。

私が読んでない古典 SF (たくさんある)かと思いきや,つい最近の作品だとか。 著者の Andy Weir さんは1972年生まれのプログラマらしい。 自身の Web サイトで連載していた SF 作品を Kindle で出したらメチャメチャ売れてしまったそうな。 羨ましい。 いや,私に文才はないので羨んでも仕方ないが。 『火星の人』は log 形式で話が進んでいくが,たしかにこれは Web 連載に適応したスタイルかもしれない。

映画を観た時は何でこれを面白いと思うのか自分でもピンとこなかったが,原作を読んだらはっきり分かった。 この作品はいわゆる「男の子回路1」をいたく刺激するのだ。 あとの人間ドラマとか「大草原の小さなハブ」とかは枝葉末節にすぎない。

いやだって,農業用の水を確保するためにロケット推進剤のヒドラジン(hydrazine, $\ce{N2H4}$, 猛毒)を燃やすんだよ。 爆発はロマンだよね。 核燃料電池を暖房に使うとか,生命維持装置を分解して修理するとか, TOKIO もビビるようなことを平然とやってのけるッ そこにシビれる!あこがれるゥ

もし貴方がまだ原作を読んでいないのなら,そのまま映画館に行くことをお薦めする。 映画版はよく出来ていると思うが,さすがに原作のあの量を2時間半に詰め込むのは無理だったようだ。 なので,映画を観て面白いと思ったら原作を買えばよい。 それで充分。

実際,映画ではほとんど何の説明もないまま物語が進行していく。 アレス計画って何? なんで「アレス3」なの? なんでクルーは砂嵐が来る前に MAV に避難してなかったの? そもそも MAV って何? 核燃料電池が使われずに地面に埋まっていたのは何故? 「アレス4」は始まってもないのに MAV が既に居るのは何故? 等々… こういう受け手側に委ねるやり方は日本の映画やテレビじゃできないんだろうなぁ。

映画を観る際に科学やコンピュータの基礎知識があるとニヤニヤできる(いや,私は爆笑しかけたけど)。 たとえばラストシーンで低軌道にいるワトニー君に近づくために「ヘルメス」が制動をかけるが,なぜそれで近づくことができるのかピンと来ない人もいるだろう(そしてそれがいかに危険な行為なのかも)。 この辺の知識はあさりよしとおさんの「アステロイド・マイナーズ」をお薦めする。

既に原作を読んだ方はアラ探しでも面白いと思う。 小説を映像化するのはなかなか難しいと思うが,この作品はよく出来ている部類だ。 あぁでも,それなら劇場で見る必要ないか。 劇場じゃ爆笑できないもんな。

参考図書

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火星の人
アンディ ウィアー (著), 小野田和子 (翻訳)
早川書房 2014-08-25 (Release 2014-09-30)
Kindle版
B00O1VJZLO (ASIN)
評価     

面白かった。やっぱ原作のほうがいいな。

reviewed by Spiegel on 2016-02-20 (powered by PA-APIv5)

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オデッセイ(字幕版)
マット・デイモン (出演), キウェテル・イジョフォー (出演), ジェシカ・チャステイン (出演), ジェフ・ダニエルズ (出演), ショーン・ビーン (出演), リドリー・スコット (監督)
(Release 2016-04-22)
Prime Video
B01EFL9ZSC (ASIN)
評価     

原作は Andy Weir 著作の『火星の人(The Martian)』。なんで劇場版の日本語タイトルがこんな巫山戯た名前なのかは不明。感想はこちら

reviewed by Spiegel on 2016-02-26 (powered by PA-APIv5)

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アステロイド・マイナーズ(1) (RYU COMICS)
あさりよしとお (著)
徳間書店(リュウ・コミックス) 2010-04-10 (Release 2017-10-13)
Kindle版
B0763GSNHZ (ASIN)
評価     

宇宙をなめるな! って感じ(笑)

reviewed by Spiegel on 2014-09-27 (powered by PA-APIv5)

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子どもが体験するべき50の危険なこと (Make: Japan Books)
Gever Tulley (著), Julie Spiegler (著), 金井 哲夫 (翻訳)
オライリージャパン 2011-05-26
単行本(ソフトカバー)
4873114985 (ASIN), 9784873114989 (EAN), 4873114985 (ISBN)
評価     

ただ守るだけではダメなのよ。

reviewed by Spiegel on 2014-10-08 (powered by PA-APIv5)


  1. 「男の子回路」は男の子だけのものじゃないとかツッコむのは勘弁してね。それくらい知ってるし,そもそも「男の子回路」と名付けたのは私じゃない。 ↩︎