経産省は CC Licenses を知らない? (追記あり)
せっかく面白い企画なんだけどサイトのデザインが悪すぎる。 私はこのページを見てどうすればいいのか分からなかった。 いきなり音楽が流れるのもなんだかなぁ,な感じだし。 センスが20世紀(笑) Flash でないぶんマシかもしれないが。
(↑ ゴメン。 タブレットで見たらだいぶマシだった。 PC のブラウザで見たときだけヘボいのか1)
まぁそれはともかく,利用規約を見て気になる点がいくつかある。
CC Licenses へのハイパーリンクがない
どうやら PHOTO METI PROJECT の写真素材は CC Licenses の「表示 」条件で公開されるようである。 が,ライセンス内容へのリンク(もしくは URI 提示)が一切ない。
何故この程度の手間を惜しむのか。
追記(2016-10-20)
後日,利用規約を見直してみたら,CC Licenses の「表示 」条件へのハイパーリンクが示されていた。 これでこのプロジェクトで提供される写真素材は正しく CC Licenses で提供されることが明白になった。
なお, Version 4.0 International ではクレジット表記について若干縛りが緩くなっている。
あなたがライセンス対象物を共有する媒体・方法・文脈に照らして、いかなる合理的な方法でも満たすことができます。 例えば、必要とされる情報を含むリソースのURIやハイパーリンクを付すことで条件を満たすことが合理的な場合があります。
まぁ,よく分からないって方は利用規約の通りにするのが無難だろう。
CC Licenses の利用条件を超える「禁止事項」
PHOTO METI PROJECT の写真素材の利用には以下の禁止事項がある
- 軍事目的での使用
- 公序良俗に反する目的での使用
- 日本国、他国または第三者の名誉または信用を毀損する目的での使用
- 写真素材の撮影者の名誉又は声望を害する方法での使用
- 犯罪的行為、犯罪的行為またはそのおそれのある目的での使用
- 本サービスの円滑な提供を妨げるおそれのある目的での使用
- その他法令に違反し、第三者の権利を侵害し、もしくは第三者に経済的・精神的損害を与える目的またはそのおそれのある目的での使用
- 改変した写真素材を当省または国が当該改変を行ったと誤認されるような態様で使用すること
- 当省2 が上記各号に該当するおそれがあると判断する目的による使用
しかしこれは CC Licenses で公開するからには基本的に無効である3。 許諾者が個人の場合は著作者人格権があるが,ライセンスによって行使できる範囲を許諾者自ら制限している。
同一性保持の権利のような著作者人格権は、本パブリック・ライセンスのもとではライセンスされません。パブリシティ権、プライバシー権、および/または他の類似した人格権も同様です。ただし、可能なかぎり、許諾者は、あなたがライセンスされた権利を行使するために必要とされる範囲内で、また、その範囲内でのみ、許諾者の保持する、いかなるそのような権利を放棄し、および/または主張しないことに同意します。
ましてや PHOTO METI PROJECT の許諾者は個人ではなく経済産業省である。 CC Licenses の利用条件を超える制限はできない。 たとえそれが悪意によるものであろうとも4。
追記(2016-10-20)
禁止事項については以下の6つに減った。
- 軍事目的での使用
- 公序良俗に反する目的での使用
- 日本国、他国または第三者の名誉または信用を毀損する目的での使用
- 写真素材の撮影者の名誉又は声望を害する方法での使用
- 犯罪的行為目的での使用
- 本サービスの円滑な提供を妨げる目的での使用
前の回りくどい表現よりはマシになったと言えるだろう。 これについては別記事でフォローする。
ライセンスを取り消しできないことを知らないのか?
更に利用規約にはこんな恐ろしいことが書かれている。
当省は、ユーザーに対してあらかじめ通知することなく、いつでも本規約に定める写真素材の提供方法もしくは提供内容または利用許諾の内容を変更し、または提供もしくは利用許諾を中止すること(以下「変更等」といいます。)ができます。
しかし実際には,いったん付与した CC Licenses を取り消すことはできない5。
ライセンスする方のための留意事項: クリエイティブ・コモンズのパブリック・ライセンスは、著作権その他一定の権利により制限されている方法によるマテリアルの利用を公衆に対して許諾する権限を持つ方によって使われることを意図しています。クリエイティブ・コモンズのライセンスは取消すことができません。ライセンスする方は、自分が選択するライセンスを適用する前に、その条項を読み、理解するべきです。
許諾者側でいつでもライセンスを取り消し可能なら,利用者はそれを安心して使うことができない。 これは基本中の基本の話である。
追記(2016-10-20)
この部分についても以下の内容に差し替えられた。
ユーザーは、本規約の変更があった後、当省が提供する写真素材の取得もしくは利用を継続することによって、変更後の本規約について有効かつ取消不能な同意をしたものとみなします。ただし、本規約変更前にユーザーが変更前の規約に基づいて取得した写真素材に適用されるライセンスの内容はこの限りではありません。
めでたし。
経産省は CC Licenses を知らないのか,それとも意図的に歪めているのか。
せっかく面白い企画なのにどうしてこんな要らないことを書いて台無しにするのだろう。
ちゃんと CC Licenses の条項を読んで自分たちが何を口走っているのか考えたほうがいい。
もしくは CC Licenses なんか使わず独自のライセンスを構成するか。
これでは PHOTO METI PROJECT のコンテンツは「自由(free)」ではない。
私はここで文句を言うだけで何かアクションを起こしたわけではないので,どなたかが指摘してくださったのだろう。 経済産業省の対応に感謝です。
参考ページ
参考図書
- CODE VERSION 2.0
- ローレンス・レッシグ (著), 山形浩生 (翻訳)
- 翔泳社 2007-12-19 (Release 2016-03-14)
- Kindle版
- B01CYDGUV8 (ASIN)
- 評価
前著『CODE』改訂版。
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これって各都道府県にワンシーンのみなのかな。広島県は世界遺産とかじゃなくて(地元民のデートスポットである)灰ヶ峰の景色かぁ。悪かないけど。 ↩︎
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経済産業省のこと。 ↩︎
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サービス妨害目的の利用は著作権云々の問題ではない。著作権以外の「第三者の権利を侵害し、もしくは第三者に経済的・精神的損害を与える目的またはそのおそれのある目的での使用」も同様であり当事者同士の問題である。利用規約の末尾に日本法を準拠法とすることが明記されているのだから,ついでにライセンス以外の侵害や紛争も日本法に基づいてきっちりやると脅しておけばよい。 ↩︎
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CC Licenses では利用者に対してクレジット表示を削除するよう要請することができる。要請された利用者はクレジット表示を削除しなければならない。 ↩︎
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ライセンスに違反した利用に対しては自動的にライセンスが「終了」する。ただし違反が是正された場合は「復活」する場合もある。 ↩︎