パズルと水素水
まずはこちらをどうぞ。
問題はこう。
ある日300円を持ってコンビニにパンを買いに行きました。170円の焼きそばパンを買った場合のおつりは幾らでしょう
まぁよく見る小学校低学年レベルの算数の計算問題である。 私もそう思ってとっさに「130円」と考えた。
でもおつりを「30円」とする解があるなら単なる算数ではなくもう一歩踏み込んだ問題と考えられる。 つまり元の問題からの逸脱がないようにいくつかの推定を重ねる必要がある。
ひとつめの推定。
もうひとつの推定。
いずれも推定としては妥当といえる。 これなら「所持金が100円硬貨3枚で200円払っておつりを30円もらう」という解もあり得ることになる。
そして,これを推し進めるなら
ということになる。
170円未満なら取引が成立しないし,所持金300円より大きな金額は払えない。 更に支払い金額に関してこれ以上の制約はない。 ここがポイント。
たとえば299円払っておつりを129円もらうというのも正しい解である。 実際にこんな不合理な支払い方をする人はあまりいないだろうが,それを制限する条件は元の問題からは読み取れない。
結局,解を満たす集合は
ということになる。
ちなみにリンク先では消費税の話題も出ている。 消費税は元の問題とは独立した変数である。 たとえば消費税が内税方式なら税率がどうであろうと商品の価格は170円のままでありインパクトはない。 逆に外税方式で税率100%なら所持金では買えないことになり問題が成立しない。
消費税に関する変数の記述は元の問題にはないため問題成立可能な範囲で値を振ると,消費税分を加算した価格の範囲は「170円から300円の間」となり,支払金額を300円としてもおつりは「0円から130円の間」で消費税を加味しなかった場合の解集合に含まれる。
問題を「算数」と考えれば計算して終わりだが,問題を読み解く,すなわち「読解力」の演習問題だと考えれば思考の幅が広がる。 こういうパズルのような問題は個人的に大好物である。
ところで元の問題には続きがある。
理系「130円」 文系「30円」
この断定の根拠についてはさっぱり分からないが1,これを見て「私は文系だな」とか「俺は理系か」とか思ったなら気を付けたほうがいい。 たぶんオレオレ詐欺でついお金を振り込んでしまうお年寄りを笑えない。 あるいは要りもしないのに高級布団や水素水を買わされたり Phishing メールのリンクを思わずポチってしまう可能性もある。
これは最後の一文まで「読解力」を問われる問題なのである。 コワイコワイ(笑)
-
それを算数の問題ととらえるか別の何かととらえるかは修めている学問分野に関係がない。日本の学校教育における理系・文系の分類にはいろいろ考える部分もあるのだが,それはまたいつかどこかで。 ↩︎