「2004年」に留まり続ける日本の Creative Commons

no extension

Facebook の TL で見かけたので早速見てみたのだが…

んー。 なんだろう,この既視感は。

個人的には「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」の水野祐理事の仕事とその成果には敬意を表すものだし,上のスライドは「出版業界」をターゲットにしているようなので,それ故に(“State of the Commons” のデータを使いながら) Free Culture の F の字も出ないのはしょうがないのかな,と思わなくもない。

駄菓子菓子。

このスライドに出ているような話は大体2003年から2004年1くらいの間に議論されているものの繰り返しに過ぎないように見える。 当時と違うのは,八田真行さんの「クリエイティヴ・コモンズに関する悲観的な見解」に代表されるような「ブートストラップ問題」は(世界的には)既に脱している,ということくらいだろうか。

CC Licenses は既に「基盤」として欠かせないものになっているし,そのために L10N を廃し他の「自由なライセンス」との互換性について配慮できるところまで来たのだ2

個人的には「CC Licenses とは」などと考えるフェーズは2004年で終わったと考えている。 ライセンスは道具に過ぎない。 大事なことは,「表現」を巡ってどんなエコシステムを築きたいのか,だ。 道具を眺めていてもビジョンは浮かばない。

たとえば日本独特の商慣行である同人市場を守りたい(これをビジョンと言っていいのか分からないが)なら,スライドにも出てきた「同人マーク・ライセンス 3」を利用する手もある。 CC Licenses にこだわる必要はないのだ。

一方,本家 Creative Commons はとっくの昔に Free Culture へと舵を切った。

日本の「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」や「出版業界」はどこへ行きたいのだろう。 独占か? それとも囲い込みか? 「現状維持」は停滞ではなく退行だよ。 音楽出版も書籍出版も他の知財分野も,それをこの十数年の間に思い知ったんじゃないの?

ブックマーク

参考図書

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CODE VERSION 2.0
ローレンス・レッシグ (著), 山形浩生 (翻訳)
翔泳社 2007-12-19 (Release 2016-03-14)
Kindle版
B01CYDGUV8 (ASIN)
評価     

前著『CODE』改訂版。

reviewed by Spiegel on 2018-11-17 (powered by PA-APIv5)


  1. 2004年は CC Licenses バージョン 2.1 日本版がリリースされた年である。ちなみに CC Licenses の最初のバージョンは2002年末にリリースされ2012年には10周年のお祝いも行われた。 ↩︎

  2. ライセンスを巡るここ10年間のトレンドがこのグローバル化と互換性といっていいだろう。この流れはまず FLOSS の分野から始まり CC Licenses や他のライセンスへ波及している。 Creative Commons では CC0, BY, BY-SA を Free Culture Licenses として他の4つのライセンス条件と区別し,他の「自由なライセンス」との互換性を図っている。そういう観点でいえば今更カスタマイズ性がどうのというのは「遅れてる」としか言いようがない。音楽は音楽だけでは閉じないし文章は文章だけでは閉じない。画像・映像も同じ。コードは人の手によって互いに混じりあい関連しあうことで意味を成すのである。 ↩︎

  3. 同人マーク・ライセンス」はある意味で CC Licenses とは真っ向から対立する。「同人マーク・ライセンス」を読めばわかるが,このライセンスは翻案のインターネット配信を明確に禁止している。それどころか許諾の対象を「二次創作同人誌」の「同人誌即売会」に限定しているのだ。(なぜこれが「複製から配信(公衆送信)へと移行しつつある出版業界」という文脈で登場するのか理解しかねるが) ↩︎