車の「離合」って標準語じゃなかったのか

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Facebook で知り合いが話題にしてて,最初何を言ってるのか分からなかったが,どうやら車の「離合」って標準語じゃないらしい。 まじすか!

念のため自動車の「離合」について説明しておくと,田舎の農道や林道など1車線程度の幅しかない道1 では所々に「離合地点(あるいは離合場所)」と呼ばれる道幅の広いエリアがあって,そこでお互い譲り合って交差できるようになっている。 この交差を「離合」と呼ぶ2。 狭い道を無理くり「すれ違う」ことではない(山道で遅い車が後続車をやり過ごすために離合地点を使うこともある)。 都市や郊外なら狭い道は拡張するか一方通行にしてしまうところだろうけど,本気の田舎を舐めてはいけない。

【2018-02-03 追記】 Facebook で山口県の知り合いから「離合」を「狭い道をすれ違うこと」という意味で使うと指摘を受けました。 つまり,うちで使う意味のほうがマイナーだったのか orz

「離合困難」というのは道幅が狭く離合地点もないため通り抜けに使えないよ,という意味である。 4文字でこれだけの意味を与えられるのだから大したもんだ。 昔はこんな標識(?)をわざわざ掲げることはなかったと思うが,今はカーナビで土地勘のない人が誘導されたりするのだろう。 ご愁傷様。

私は田舎育ちなので,子供の頃(少なくとも40年以上前)から「離合」という言葉をごく普通に使っていた。 学校で習った「離合集散」の離合のほうがピンと来なかったくらいである。 漢字の音読みだし何かの用語か隠語が語源なんだろうとは思うが(伝統的な方言なら訓読みになると思う3),一般的に知られてないとは露ほども思わなかったよ(笑)

「離合」の一般的な言い換えは「すれ違い」だそうだが,微妙にニュアンスが違うような気がする。 「すれ違い」を辞書で引くと

  1. 触れ合うほど近くを反対方向に通りすぎること
  2. 時間や位置などがずれて、会えるはずが会えないこと
  3. 議論などで、論点がかみあわないこと

といった意味で使われる。 そうか。 2 や 3 のニュアンスに引きずられるから違和感があるのか。 とういうわけで,個人的には「離合」の上手い言い換えを思いつかない。

「文化とは文化の混血児 (hybrid) 」である。 厨房内隠語の「おあいそ」を一般客が使うようになったり,マスコミ用語の「集中豪雨」や「猛暑」が正式に気象用語として定義されたりなど,特定集団の用語や隠語が一般的に使われたり別集団の用語や隠語になったりというのはよくある話。 「離合」もそういったもののひとつかもしれない。

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  1. 今の農道や林道ってどえら立派なものがあるよね。国交省とは管轄が違うので予算のかけ方も違うのだろう。あれってやっぱり「竹下政権」以降の傾向なのだろうか? ↩︎

  2. ちなみに鉄道の「離合」について私は全く馴染みがない。鉄道の「離合」は少なくとも複線化されているか別の路線と並走状態にないと発生しないと思うが,島根県の山陰本線は(今でこそ一部複線化されているが)基本的に単線で他の路線が並走することもない。急行や特急をやり過ごすために駅で待ち合わせをすることはあるが(個人的にはこちらのほうが「離合」のイメージに近いんだけど)… ↩︎

  3. 標準語だと思って使っていた言葉が実は方言だったというのは「地方あるある」なので,アイデンティティが刺激されること請け合いである(笑) 私もブログで意図的に方言を使うことがある。「エラい」とか「ぞんぞがさばる」とか。 ↩︎