「自由とはそういうことだ」
面白い記事を見つけたので。
記事でも書かれているが CC Licenses は「表現の自由」を規制する著作権(法)を根拠としたライセンスである。 たとえば同じ知財権でもアイデアは特許権で守られているし名前や意匠は商標権や意匠権で守られている。 人工的に作られた「権利」は注意深く運用すべきであり,守るべき本来のドメインを越えてはいけない1。
ようするに
ということである。
CC Licenses における「非営利」とは(「Creative Commons Licenses」より抜粋)
巷にあるライセンスでは「営利」あるいは「商用」などのキーワードが付くことがあるが,どこまでが「営利」で「商用」なのか分かりにくいことが多い。 CC Licenses では「非営利 」について
と定義し「商業的な利得や金銭的報酬」が主目的でなければ「非営利 」条件を満たすとしている2。 後半の文言は分かりにくいが,これはファイル交換などオンラインでの取引を念頭に置いたもので,この場合でも金銭的報酬がなければ「非営利 」条件を満たすとみなしている。
ここで微妙なのは,アフィリエイト広告のある Web ページに「非営利 」条件のあるマテリアルを利用することができるかということだが, Creative Commons 創設者のひとりである Lawrence Lessig 教授の2008年当時の発言によると
ということで,ひとまず問題ないようだ3。
CC Licenses では(可能なかぎり)人格権は行使されない(「人格権と CC Licenses」より抜粋)
人格権について CC Licenses はどうしているかというと,許諾範囲を逸脱しない限り許諾者は人格権を行使しないことになっている。
人格権の一身専属性を考えればこのような表現になるということだろう。 ただし「可能なかぎり」という条件がついている。
この点について,以前のバージョンでは比較的明確に書かれていて,たとえば 2.1 日本版では
とあり,原著作者の名誉・声望を害する改変は二次的著作物に含めない,としている。 また 3.0 Unported でも同様に
となっている4。
この辺の文言が 4.0 International でなくなった理由はよく分からないが,“What’s New in 4.0” には
との記述があり,あえて「名誉・声望を害する改変」部分の記述を削った可能性もある5。
キャラクタの権利
キャラクタやキャラクタの名前の利用については著作権ではなく商標権(工業デザインの場合は意匠権)で保護されることが多い6。 この場合, CC Licenses は商標権や意匠権についてはライセンスしないので,個別に許可を得る必要がある。
実在の人物やその人物の延長上のキャラクタ(「デーモン小暮閣下」など)に対しては「パブリシティ権」が適用される。 パブリシティ権は肖像権の一種と考えられ「氏名・肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利7」と定義されている8。 CC Licenses では,これまで述べた通り,パブリシティ権についてもライセンスしないが「可能なかぎり」行使しない,となっている。
ブックマーク
参考図書
- THE ビッグオー
- Prime Video
- B0732279VT (ASIN)
- 評価
名作。絵のテイストも好みだし,ハイライトのない瞳の表現とかも素敵。汝ら罪なし!
- もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来
- yomoyomo (著)
- 達人出版会 2017-12-25 (Release 2019-03-02)
- デジタル書籍
- infoshare2 (tatsu-zine.com)
- 評価
WirelessWire News 連載の書籍化。感想はこちら。祝 Kindle 化!
reviewed by Spiegel on 2018-12-31
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これはもちろん昨今の著作権法改訂の「暴走」に対する皮肉だよ。 ↩︎
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一般的に「営利」「商用」という場合にはかなり広い範囲をさすようだ。たとえば企業における業務利用は全て(直接の金銭的報酬がなくとも)「営利」「商用」と見なされる。面白い例を挙げると, IPA が公開している「GNU GPL v3 逐条解説書」は日本版(v2.1)の「表示-非営利-改変禁止」ライセンスになっているが「出版等営利目的での利用は禁止しますが、企業・団体等の内部における利用(講習会、勉強会等)を目的とした複製及び翻訳については、無償で許可します」という但し書きがある。おそらく CC Licenses の「非営利 」について拡大解釈しすぎないよう配慮したものと思われる(実際には「改変禁止 」条件では翻訳は許諾範囲外だが,利用状況によって個別に許可を与えていると解釈できる。このように CC Licenses は許諾範囲を広げる方向に対しては割と柔軟に運用できる)。 ↩︎
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Creative Commons 側は,マテリアルの取り引きによって金銭的報酬が発生するようなことでなければ「非営利 」条件にかかることはないと考えているようである(あとは企業広告の素材として使う場合とか)。ただ,一時期流行ったアフィリエイト報酬を主目的とする「パクりサイト」の場合はダメな気がする。司法判断を仰ぐ必要があるかもしないけど。ちなみにこのサイトは「表示-継承」条件を守っていただけるなら,いくらでもパクって稼いで構いませんよ(笑) ↩︎
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CC Licenses 3.0 では著作者人格権に関する議論が国際的にも行われたようだ。くわしくは「著作者人格権(同一性保持権)に関する議論」が参考になる。 ↩︎
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この辺は GPL などの他ライセンスとの互換性を考える上で重要なポイントでもある。 ↩︎
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基本的にキャラクタや名前には著作権はない。このため防衛のためにキャラクタやキャラクタの名前を商標登録することが多いらしい。ただし創作上の文脈としてキャラクタや名前が書(描)かれている場合は著作物の一部として認められる場合がある。 ↩︎
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「ダービースタリオン事件」判決文 より。 ↩︎
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ただし作品上の架空のキャラクタや無機物やペット等にはパブリシティ権は適用されない。 ↩︎