Web3 ってゆーな!

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久しぶりの「◯◯ってゆーな!」シリーズ。 ってシリーズだったのか,これ。

今回のトリガーはこちら。

まぁ「Web技術者が全くワクワクしない」かどうかは知らないが,もし「Web3 は Web じゃないよね」という意味があるなら同意する。

面倒くさいので日本語 Wikipedia から引用してしまうが, Web3 とは

Web3(ウェブスリー)、またはWeb3.0とは、パブリック型のブロックチェーンを基盤としたインターネットの概念である。

この言葉は2014年に暗号通貨のイーサリアムの共同創設者であるギャビン・ウッドによって作られたもので、このアイデアは2020年と2021年に暗号通貨に熱狂する者や大型IT企業、ベンチャーキャピタルから関心を集めた。

らしい。 一方で古のインターネットから Web は World Wide Web の略称で使われる。 ゼロ年代の Web 2.0 もこの文脈で語られている。 その意味で「ブロックチェーンを基盤」とする Web3 は明確に “Web” じゃない。 まぁ,私としては昨年(2021年)の時点で NFT を「Xanadu 未満」と切り捨ててるんだけどね。

ちなみに “Xanadu” とは

World Wide Webは確かにリンクを使うことで世界中に散らばるドキュメントに関連性をもたせることに成功した。Xanaduもそれを狙っていたことは事実だけれど、World Wide Webをドキュメント中心のネットワークと仮に定義するならば、Xanaduはリンク中心のネットワークとでも言えるかもしれない(World Wide Webだってリンク中心じゃないか、と言う人もいるかもしれないけど)。というのも、Xanaduでは元となるドキュメントは一つしか存在せず、それ以外は全てコピーでしかない。World Wide Webでは構造上、オリジナルのコピーをそのまま転送することで通信を可能にしておりオリジナルとコピーの差は無いけれども、 Xanaduではオリジナルとコピーは「違うもの」として定義される。オリジナルとコピーはリンクの方法によって様々な変化を加えることが可能となる。だから必然的にXanaduではリンクの方式がWorld Wide Webと比べて豊富である(p301-307)。修正リンク、コメントリンク、双対リンク、翻訳リンク、見出しリンク、パラグラフリンク、引用リンク、レイアウトリンク、脚注リンク、ハイパーテキストリンク、通常のジャンプリンク、モード付きのジャンプリンク、推奨コースリンク、拡張リンク、著作リンク、参照リンク、代替バージョンリンク、コメント文書、保証リンク、メールリンクなどがある。

Xanaduの実現を難しくしている原因の一つは、著作権問題にある。いわゆるマイクロペイメント・システムが実現し、データ通信量に応じて著作権料が支払われるシステムをXanaduは想定しているけれど、今のところこれを可能にするマイクロペイメント・システムは実現されていない。バージョン管理システムも、CVSのようなアプリケーションとしては存在していても、HTMLそのものにバージョン管理システムが埋め込まれているわけではない。そして、XanaduとWorld Wide Web(インターネット)の歴史を隔てる一番の要因は、開発方法そのもの。インターネットは徹底してオープンな姿勢を貫いてきた。勿論例外も存在するけれど、基本的にソースは公開されることが原則で、だからこそGPLやLinuxなどといったものが生まれて来た。それに対して Xanaduはソースの内容を一切公開せず特許化してしまっている。だから、ネルソンの語るXanaduの理想郷がどれだけ素晴らしいものであったとしても、開発グループに入ることができなければ、Xanaduに関わることはできない。HTMLは確かに貧弱なマークアップ言語だが、その記述方法が簡単であったからこそ、ここまで普及することができたのも事実なのである。もし、仮にXanaduがオープンソースであったのなら、もしかしたらHTMLではなくXanaduが今のインターネットの主流になっていたのかもしれない。それでもXanaduはHTMLやXMLで実現できそうにない部分を未だに含んでおり、今後もその理念は必要とされていくのだろう。

といったような話。 こうした考え方が1980年代にはすでに出ていたわけだ。 故に Web3 みたいなもの言いは止めて Xanadu 2.0 とでも呼ぶべきだろう。 もし「それ」が Xanadu を超えるなら面白いとは思っている。

私は(マシン語ベースでコードを書いてた時代はともかく)現代ソフトウェア設計において「名前」はとても重要な「制約」だと思っている。 名前と意味(機能)の乖離は徐々に確実に設計を狂わせる。 名前と意味の関係が一意で絶対とまでは言わないが,名前を軽視するソフトウェア・エンジニアは三流以下だと思う。

参考図書

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もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来
yomoyomo (著)
達人出版会 2017-12-25 (Release 2019-03-02)
デジタル書籍
infoshare2 (tatsu-zine.com)
評価     

WirelessWire News 連載の書籍化。感想はこちら。祝 Kindle 化

reviewed by Spiegel on 2018-12-31