「出雲神話フォーラム2025」へ行ってきた
今日はお出かけ予定日なのだが,昨日から雨模様。
それはいいのだが,今日は「まつえレディースハーフマラソン」があるのをすっかり忘れていて,バス停の貼り紙で思い出した。
午前中の路線バスは運休なんだった orz
しょうがない。
徒歩で行くか。
今日のスポーツアクティビティはウォーキング10K歩以上で。
しかし,雨で気温も低いのにマラソンやるのか。 アスリートって大変だな1。
松江市内徒歩遊覧
宍道湖畔へ寄り道しつつ

用事を済ませながらJR松江駅まで行ったのだが,この時点で12時だった。 しまった。 昼飯を食う暇がない(久しぶりに一福で蕎麦が食べたかったのに)。 しょうがないので駅前のコンビニで BLT サンドイッチを買って島根県立美術館までてくてく歩く。
「出雲神話フォーラム2025」へ行こう
そう。 今日は県立美術館のホールで「出雲神話フォーラム2025」ちうのがあるのですよ。 先月,日付を間違えたアレっす。

そんなこんなで県立美術館に到着。

入場時間まで15分ほど余裕があったので急いで BLT サンドを詰め込んで時間まで Mastodon/Bluesky をチェックしておく。
時間になったので手続きして入場する。 つか,県立美術館ってホールがあるんだねぇ。 展示室しか入ったことがないので知らんかったよ。 シートはゆったりしていて折りたたみ式の簡易テーブルが付いてる。 助かる! 松江テルサのホールのシートはテーブルがないので膝の上にノートを広げざるを得ず,不便だったのを思い出す。
「出雲神話フォーラム2025」は二部構成になっていて
- 第1部
- 「アートで表現する稲田姫」(島根県立大学 松江キャンパス 地域文化学科 山村ゼミ発表)
- 創作石見神楽「稲田姫」上演(温泉津舞子連中)
- 第2部
- ドキュメンタリー映画上映「永遠を建てる―出雲大社カミとヒトの風景へ」
- パネルディスカッション「出雲が生み出したもの―文学、建築、アート、写真、芸能」
という内容。 以下にひとつずつ紹介してみる。
「アートで表現する稲田姫」
予防線を張っておくと,私の「古代出雲」に対する関心領域は考古学または歴史学に偏っていて「出雲神話」を記紀ベースで語られると「けっ」という感じにやさぐれてしまう狭量な人間である(出雲神話を語るなら風土記ベースだろが)。 でも芸能・建築・美術の領域から見た「出雲神話」はどう評価されるんだろうとちょっと期待していた。
実は「出雲神話フォーラム」自体は今年で4回目の開催なんだそうで,島根県立大学による発表も今回で3回目なんだそうだ。 以前にどんな発表をされたのか知らないが,今回は「稲田姫(クシナダヒメ)」がテーマ2。
「稲田姫」のイメージは古代・中近世・近現代の3つに分かれるそうで
- 古代: 稲田姫はスサノオ神に守られる存在。ヤマタノオロチ退治では櫛に変化してスサノオ神の髪に挿される
- 中近世: スサノオ神によるヤマタノオロチ退治では後方支援をしているらしい? 経典(法華経?)を持った絵が多くある
- 江戸時代の歌舞伎では稲田姫はヤマタノオロチに飲み込まれるが,持ってた短刀で腹を裂いて自ら脱出する。その際に大蛇の腹から剣(十拳剣)を持ち帰り,それを使ってスサノオ神がオロチを退治する
- 近現代: 稲田姫をメインにした(または稲田姫のみを描いた)絵画が増える。極めつけは荒川亀斎が1893年のシカゴ万博に出品した稲田姫の像で,剣を持ってるそうな。これ以降剣をもつ稲田姫の像や絵画がたくさん作られたらしい
こうしたイメージの変遷を踏まえて次の「創作石見神楽『稲田姫』」の上演につながる。
創作石見神楽「稲田姫」上演
「創作石見神楽『稲田姫』」のあらすじはザっとこんな感じ(かなり端折ってるのはご容赦):
稲田姫は出雲の稲原1 に住まう国つ神で7人の姉とともに稲田を守っている。
ある日,7人の姉がいない隙に山川・田を枯らす厄神である「鬼」が顕れる。稲田姫は鬼と立ち回りを演じ最終的に剣を用いてこれを退ける。
稲田姫は鬼を退治した剣を「宇迦の剣」と名付け土地の守りとし,自らも稲原の守り神となる。
お気付きだろうか。 この神楽にはスサノオ神もヤマタノオロチも出てこないのだ。 面白い!! しかも神楽に出てくる「鬼」は剣によって弱らされるが,殺されることなく退散する3。 つまりこの剣は(岩をも割く剣でありながら)「不殺(ころさず)の剣」なのである。
ちなみに稲田姫の演者は男性でお面を被っているが,これがいわゆる小面(若い女性を意味する能面)によく似た意匠なのである(意図的らしい)。 これを見て「儒烏風亭らでん」を連想して吹きそうになった私は悪くない(多分)。
あと連想したのは「セーラームーン」とか「プリキュア」かな。 敵を殺さず,悪意・害意のみを滅する美少女戦士って感じ(笑) 内容はめっさ「いまどき」で面白かった。 でもガチの神楽なのよ。
その後10分の休憩の挟んで第2部へ。
ドキュメンタリー映画上映「永遠を建てる―出雲大社カミとヒトの風景へ」
次は30分程のドキュメンタリー映画,出雲大社の神職の方へのインタビューを中心に構成されている。 これに遷宮の話や2000年に発見された「柱」の話が絡むわけだ。
この映画は後日東京大学のサイトで公開されるとのことだったが,既に YouTube で公開されてるな。
この内容が全て。 是非ご覧あれ。
パネルディスカッション「出雲が生み出したもの―文学、建築、アート、写真、芸能」
パネラーは以下の通り:
- 平藤喜久子(國學院大學教授)
- 港千尋(多摩美術大学教授、写真家)
- Alan Cummings(ロンドン大学准教授)
- Kio Griffith(Visual Sound Artist)
- 大杉浩司(岡本太郎記念館客員研究員、キュレーター)
- 小泉凡(小泉八雲記念館館長)
以下,覚えてる範囲で箇条書き:
- パネラーの小泉凡さんは小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)直系の曾孫だそうで,「凡」の名前は仏教関係の絡みかと思ったが,彼の祖父(小泉一雄)と親交があったボナー・フェラーズからとったものらしい。会場がちょっとウケてた
- 小泉八雲は当時の千家家の当主と深い親交があり「神道」を体感している。それを元にした著作を読んだのがボナー・フェラーズ(マッカーサーも小泉八雲の著作を読んだらしい)。戦後処理の過程で昭和天皇が処刑されることなく「象徴天皇」に収まったのには小泉八雲の著作の影響もあるのでは? との見解
- 建物から作られる神話と神話から作られる建物がある。出雲大社は後者。前者の例としてはバベルの塔やクレタ島の迷宮など
- 日本の神話は「神同士の約束」の物語。出雲大社も「国譲り」神話の約束によって建てられ守られている
- 出雲大社等の建築に見られるように「有限の存在を無限に繋げる」というのはアートの本質
- 岡本太郎は出雲大社を「野蛮な凄み、迫力」と評している。これは彼の最大級の賛辞らしい
- 日本で(仏様ではなく)神様の絵が盛んに描かれるようになったのは江戸時代あたりから。当時としてはポップな絵で描かれていて(絵画で神様で遊ばせる),そこから神話が庶民に浸透していく
- 神様は遊んでいる,という考え方
- ヤマタノオロチのイメージは江戸時代に入ってからのもの
- 近年「怪談」アートが海外の若者に人気←ポケモンの影響? (鬼滅はどうなんだろう?)
- Alan Cummings さんによると,東アジアの神話コースを作ったら受講者が殺到(100人くらい)したらしい
- 「妖怪」の絵は江戸時代から見られるが「怪談」のアートを見るようになったのは最近?
- 第1部で稲田姫を生成 AI で描かせてみたが上手くいかず,最終的に農家の娘みたいな絵になった
- AI は見たことのないものを描くのは苦手?
- 見たことがないものをどう描くかがアート(妄想?)→ 神話的な行い
- 描かずにはいられない。作らないと後悔する
- 岡本太郎は絵画に関しては「描かずにはいられない」タイプだったらしい。一方で彫刻等については頼まれて造ることが多い
- 「太陽の塔」の依頼が来たとき,周りはみんな依頼を受けることを反対したそうだが,そのことで逆に創作意欲を掻き立てられたらしい(笑)
- 近年流行りの「前世」や「生まれ変わり」の物語と神話との関係
- 1996年から若者に対するアンケートで「生まれ変わりを信じるか」という質問があったが,6割が「生まれ変わりはある」「あり得る」と答えたらしい。今もそう変わらないのではないか
- オウム真理教の事件を受けてのアンケート
- 「前世」や「生まれ変わり」が登場するのは1970年代後半〜1980年代
- 幻魔大戦
- 僕の地球を守って
- オカルトブーム
- 生まれ変わりではないが「変身」をテーマにした神話や物語は多い。江戸時代の歌舞伎でも「やつし」ものと呼ばれる変身の物語がある。変身願望や生まれ変わり願望が流行る背景は時代によって色々あるだろうが,それ自体は昔からある
- 1996年から若者に対するアンケートで「生まれ変わりを信じるか」という質問があったが,6割が「生まれ変わりはある」「あり得る」と答えたらしい。今もそう変わらないのではないか
- これからは「スサノオ神」や「ヤマタノオロチ」の時代ではなく「稲田姫」や「小泉セツ」の時代
- 今日の創作神楽は象徴的
- 9月からの「ばけばけ」をよろしく
て感じかな。 (一部「神話」や「アート」じゃないのも混じってるけど)色々な話が出て面白かった。 だいぶ端折ってるけど。
さぁ帰ろう
当初は16時半までの予定だったが,時間を延長して終わったのが17時ごろだった。 路線バスの運行は回復してると思うが,30分くらい待たないといけない。 ちょっと考えて歩いて帰ることにした。
宍道湖畔でバード・ウォッチングしながら帰宅。

ちなみに今日は16K歩ほど歩いた。 目標はクリア(笑)
明日は楽しい月曜日!
ブックマーク
- 「永遠を建てる—出雲大社カミとヒトの風景へ」上映会・アフタートーク「古代バビロニアから出雲へ—永遠を目指す神殿—」 - YouTube : 2025-01 に東京大学での上映会の様子
参考図書
- 古代出雲の氏族と社会 (47) (同成社古代史選書 47)
- 武廣 亮平 (著)
- 同成社 2024-03-11
- 単行本
- 4886219454 (ASIN), 9784886219459 (EAN), 4886219454 (ISBN)
- 評価
「島根の歴史文化講座 2024」で講師をされた武廣亮平さんの著作。興味本位で買うには躊躇するお値段だし地元の県立図書館でも借りれるが,じっくり読みたいので買ってみた。著者の過去の論文を再構成した内容。記紀などの史料や過去の研究者の膨大な文献を整理した上で古代出雲についての考察を行う。
- 古事記物語
- 鈴木 三重吉 (著)
- 2012-10-01 (Release 2012-10-01)
- Kindle版
- B009KSG2Q4 (ASIN)
- 評価
青空文庫で読める。物語として面白い部分は詳細に書かれているが,結構省かれている部分もあって「読み物」という感じ。
- 神道入門 日本人にとって神とは何か (平凡社新書)
- 井上 順孝 (著)
- 平凡社 2006-01-12 (Release 2013-08-01)
- Kindle版
- B00EUVZHX0 (ASIN)
- 評価
Kindle 版登場。日本の神道の系譜が網羅的に書かれている。
- 怪談・骨董 (河出文庫)
- 小泉八雲 (著), 平川祐弘 (翻訳)
- 河出書房新社 2024-02-06 (Release 2024-04-26)
- Kindle版
- B0CWB6NHLW (ASIN)
2024年は小泉八雲没後120周年らしいので,試しに買ってみた。
- 神様のお仕事 3 (講談社ラノベ文庫)
- 幹 (著), 蜜桃まむ (イラスト)
- 講談社 2013-11-01 (Release 2013-12-20)
- Kindle版
- B00HCB8098 (ASIN)
- 評価
和風ファンタジー仕立てのラブコメ第3巻。お祭り回。
- サクラミラージュ
- ReGLOSS (メインアーティスト)
- cover corp. 2036-01-01 (Release 2025-03-10)
- MP3 ダウンロード
- B0DZNX5YTH (ASIN)
- 評価
リリース日に mora の高解像度版を購入。この歳になってこんな買い方するとは(笑) ReGLOSS は5人の音色(おんしょく)が皆個性的で,これがカッチリ嵌ると本当に格好いい! ヘヴィローテーション中。