天文民俗学としての暦 — 『こよみごのみ』を読む

no extension

私は子どもの頃から天文ファンなのだが(研究者になるには頭も性格も向いてなかったが),天文現象そのものよりも背後にあるロジックやルールに心惹かれる性質で,いわゆる「計算屋」というやつである。 特に「暦」は,天文現象の背後にあるロジックを識り(日常生活に沿うよう)ルール化するという意味で,大好物のテーマだったりする。

でも暦は単なるルールではない。

たとえば魏志倭人伝には,私達のご先祖様である倭人は「其の俗正歳四時を知らず、ただ春耕秋収を記し、年紀と為すのみ」だったと書かれているそうな。 日本に暦が輸入されたのは6世紀に入ってかららしい。 古墳時代後期に入るあたりかな1

時間はハムスターの回し車のような無限に繰り返される輪廻の輪ではない。 日々の営み(の変化)があり,それが文化や信仰に昇華し,暦に重ね塗りされていく。

私が高校時代に天文民俗学に転んだのも天文現象や暦といったものに文化や信仰が絡み変化している様子が面白いと思ったからである。 まぁ,当時は中二病まっしぐらだったのいうのも理由のひとつではあるが(笑)

というわけで 2026-02-06 にリリースされた『こよみごのみ1巻である。

『こよみごのみ』Kindle版ゲットだぜ! | Flickr

暦をテーマにした漫画としては『猫暦』以来面白いと思った。

表紙には

元旦の暦の使いが記憶喪失に!? このままでは人間界の時の歯車が停止してしまう!?

とある。 さて,どうなるやら(笑)

猫暦』は暦を制作(改暦)する話であったが『こよみごのみ』のほうは暦を巡る人々の日常(変わるものと変わらないもの)がテーマのひとつになっている。 その変化は,決して過去を忘れているのではなく,歴史を経て油絵のように重ね塗りされた風景であり,かつ未来の変化をも予期させる。 著者さんがそこまで想定しているかは分からないが。

民俗学(folklore)は単に歴史を数え上げるものではなく,現在進行系で変化している世の中を切り取っていく作業だと思っている。 そういう観点で『こよみごのみ』は暦の擬人化手法も含めて面白い作品だと思う。

参考

photo
猫暦(1) (ねこぱんちコミックス)
ねこしみず美濃 (著)
少年画報社 2014-10-14 (Release 2016-02-15)
Kindle版
B01BHGVLOY (ASIN)
評価     

「寛政の改暦」のころの伊能勘解由(忠敬)とその妻とされる「おえい」の物語。感想はこちら

reviewed by Spiegel on 2016-05-06 (powered by PA-APIv5)

photo
暦の大事典
岡田 芳朗 (編集), 神田 泰 (編集), 佐藤 次高 (編集), 高橋 正男 (編集), 古川 麒一郎 (編集), 松井 吉昭 (編集)
朝倉書店 2014-07-29
大型本
4254102372 (ASIN), 9784254102376 (EAN), 4254102372 (ISBN)
評価     

古今東西の暦について網羅されている。結構なお値段だが図書館で借りて読んだ。

reviewed by Spiegel on 2016-05-05 (powered by PA-APIv5)


  1. 日本史の分類としては古墳時代から平安時代にかけてを「古代」と呼ぶことが多い。それより前はむしろ考古学の領域と言える。 ↩︎