Anne Frank Scandal
日本でもボチボチ話題になってるようだけど,いろいろ考えるものだねぇ。
『アンネの日記』の著作者である Anne Frank の没後70年が経過する(つまり著作権が消滅する)来年2016年を目前にしたこのタイミングで,彼女の父親を共著者とすることで作品の更なる保護期間の延長を目論んでいるようである。
『アンネの日記』は著作者の父親が遺品である彼女の日記を編集しまえがきを添えて1947年に出版している。 彼女とその家族は父親以外すべて強制収容所で戦後を迎えることなく亡くなり,父親である Otto Frank も1980年に亡くなっている。 つまり Otto Frank にも著作権があるとするなら2050年まで権利が存続することになる1 2。 もう誰もいないのに。
私なら自分の思春期の日記なんか残ってた日にゃソッコーで焼却して灰を地層処分するところだが,財団はまだまだ彼女でひと儲けしたいらしい3。 やれやれ。
『アンネの日記』は陰謀論も含めて色々言われてきたが,とっくに決着のついている話であり,この時点でこんなことを言うってのはまさに “copyright monopoly abuse” である。
結局「著作権保護期間の延長」を目論んでいるのはこういう輩なのだ。 それ以外に著作者の死後70年も権利を有効にさせる意味があるだろうか。 そして今回の件が指し示すことは,彼らは(口では何と言おうと)決して「70年」で満足していないということだ。
この前にも書いたが,保護期間の延長というのは「公有財産の私有化」にほかならない4。 そして彼らは,ヤクザがみかじめ料を求めるように,一度それを許せば何度だって要求してくるのだ。
参考
- Copyfraud: Anne Frank Foundation claims father was “co-author,” extends copyright by decades / Boing Boing
- アンネ・フランク財団、彼女の父親が『日記』の「共著者」として著作権保持を主張 - YAMDAS現更新履歴
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出版された『アンネの日記』は元になる日記(原本)から改変されている。財団はこの点を指して共著者だと言っているようだ。もし改変部分に著作物性が認められるなら,それはむしろ二次的著作物と言えるものだろう(実際には改変部分は原本のオリジナリティを損なうものではないと評価されている)。ちなみに原本はオランダ国立戦時資料研究所に寄付されている。そこで鑑定の結果 Anne Frank 本人のものだと認められている。もうひとつ余談だが,特定の資料を「記憶遺産」とかいって特別扱いするのは馬鹿げてるし政争のもとだし,何より選ばれなかった側の資料が排除される恐れさえある。なんでこんなアホな制度を作ったのか。ユ◯スコには小一時間説教したい。 ↩︎
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念のために言うと,翻訳版には翻訳者の権利が加わる。二次的著作物になるからね。 ↩︎
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公有の作品を売っちゃいけないって法はないんだけどね。そういえば,百均で青空文庫に収録されてる作品を売ってるのを見たことがある。 ↩︎
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表現やアイデアってのは本来だれものでもないってことをお忘れなく。知的財産権が消滅するってのは,表現やアイデアを公有に「戻す」ってことである。 ↩︎