2019年 公有化に関する2つの話題
あけましておめでとうございます。 2019年もよろしくおねがいします。
先日から実家に引きこもっているのだが,テレビによる「平成最後の〇〇」連呼にウンザリしていまいゲームと読書で自堕落に暮らしている1。 おかげ様で『もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来』の本編を読み終えちまったぜ(感想は後日)。
毎年この時期の恒例である「公有化される作品の作家」リストの話題だが,昨年末に施行された改正著作権法のおかげで20年先送りされた。
一方,米国においては著作権保護期間延長が決まってからちょうど20年経ったそうで,ようやく今年から「公有化される作品の作家」が追加される。
- Join us for A Grand Re-Opening of the Public Domain - Creative Commons
- Join us for A Grand Re-Opening of the Public Domain | Internet Archive Blogs
- アメリカにパブリックドメインが帰ってくることを祝してインターネット・アーカイブに寄付した - YAMDAS現更新履歴
こういった先行例を見ても今回の(政局によりなし崩し的に決められた)著作権期間延長が著作権法の目的(第1条「文化の発展に寄与することを目的とする」)に背くものであることが分かると思う。
まぁ,いつまで愚痴っていてもしょうがない。 できることをしよう。
まず『インターネット図書館 青空文庫』の巻末に寄せられた富田倫生さんの文章が青空文庫に収録された。
Profile を見て気付いたが,富田倫生さんって広島市の出身なんだねぇ。 広島でこの手のイベントをやればいいのに。
2019年に公有化される筈だった作品の作家リストを見ると翻訳家の方が2人ほどいらっしゃる。 ご存知とは思うが,翻案された作品には(原作者とは別に)翻案者にも著作権が発生する。 したがって原作者の作品の著作権が切れていても翻案者の保護期間が残っている場合もあるわけだ。
これに対して翻訳者の方が翻訳文に CC Licenses を付けるなどして意図的に青空文庫に収録する場合もある。 ちなみに私は大久保ゆうさんによるシャーロック・ホームズ・シリーズの翻訳のファンである。 また,翻訳文に限らずとも白田秀彰さんのように自身の論文を青空文庫に登録している方もおられる。
公有化されていなくても作品を「自由」にすることはできるのだ。
余談だが Change.org で以下のキャンペーンが上がっている。
まぁ私は署名に参加するくらいしかできないが,こういうものもあると覚えていただけると嬉しい。
著作権保護期間延長は明確に改悪だと思うが今さら文句を言っても始まらないし,むしろこれを機会に「自由」について日本人もそろそろ真面目に考えてみるというのはどうだろう。 そういう2019年になれば幸いである。
ブックマーク
参考図書
- インターネット図書館 青空文庫
- 野口 英司 (著)
- はる書房 2005-11-01
- 単行本
- 4899840721 (ASIN), 9784899840725 (EAN), 4899840721 (ISBN)
- 評価
青空文庫の活動について紹介。作品を収録した DVD も付いてる! 巻末に載っている富田倫生さんの文章は青空文庫に収録されている。
- 本の未来 (Ascii books)
- 富田 倫生 (著)
- アスキー 1997-02-01
- 単行本
- 4756117074 (ASIN), 9784756117076 (EAN), 4756117074 (ISBN)
- 評価
e-book の未来を予見する試みの書。あるいは本とコンピュータの関係について。青空文庫にも収録されている。
- シャーロック・ホームズ「赤毛連盟」
- アーサー コナン・ドイル (著), Arthur Conan Doyle (著), 三上 於菟吉 (翻訳), 大久保 ゆう (翻訳)
- でじじ発行/パンローリング発売 2007-05-01
- CD
- 4775929259 (ASIN), 9784775929254 (EAN), 4775929259 (ISBN)
- 評価
青空文庫に収録されているシャーロック・ホームズ・シリーズの翻訳を朗読する。第一弾は「赤毛連盟(Red-Headed League)」で佐々木健さんによる朗読。一人で何役もこなす佐々木健さんがかっこいい!
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生前退位による改元なんだからそこまでの重みはないし,重くしないための生前退位でもあると思うのだが。昭和から平成への改元は「冷戦終結」と重なっており歴史的にも意味のある大転換だったが,年単位で激しく変化する昨今に改元程度の変化ではインパクトが小さいだろう。まぁ歴史は過ぎてみないと分からないが。 ↩︎