「それ」がデジタル生まれなら「本」である必然性はない
久しぶりにこれを引用しておこうか。
制約は構造を生む。 そして制約が変われば構造も変わる。
『ルポ 電子書籍大国アメリカ』以来,注目している大原ケイさんが,新年早々,面白い記事を書かれている1。
- アメリカの書籍出版産業2020:これまでの10年と、これからの10年について(1)~ Eブックで起こったディスラプション/米司法省対アップルと大手出版5社の談合の結末 | HON.jp News Blog
- アメリカの書籍出版産業2020:これまでの10年と、これからの10年について(2)~ 大きくなって交渉力をつけるか、小さくやってニッチを突くか/アメリカ出版業界の海賊版対策 | HON.jp News Blog
- アメリカの書籍出版産業2020:これまでの10年と、これからの10年について(3)~ セルフ・パブリッシングから生まれた本のアマチュアリーグ/Eブック市場はこれからの10年でどうなるのか? | HON.jp News Blog
- アメリカの書籍出版産業2020:これまでの10年と、これからの10年について(4)~ 出版社のこれからの10年を握るカギはやっぱりアマゾン/書店の二極化:大手チェーンとインディペンデント書店 | HON.jp News Blog
- アメリカの書籍出版産業2020:これまでの10年と、これからの10年について(5)~ インディペンデント書店はなぜリバイバルできたのか? | HON.jp News Blog
- アメリカの書籍出版産業2020:これまでの10年と、これからの10年について(6)〜〜いわゆる取次や印刷はどうなっているのか|りんがる aka 大原ケイ|note : これだけ有料。300円
- アメリカの書籍出版産業2020:これまでの10年と、これからの10年について(最終章)メチャ売れしたのは「オンナコドモ」の本…だけどそれでいい気がする|りんがる aka 大原ケイ|note
この中で一番ささったフレーズは
なのだが,とりあえずそれは置いておいて,せっかくこの10年を総括する記事なんだから,私も便乗した記事を書いてみよう。 大原ケイさんは出版側に立つ方なので,私は「読者」の立ち位置で。
私の「本」の買い方と読み方はこの5年ほどで大きく変わった。 ポイントは大きく2つ。
ひとつは「本」購入のメインが E ブック2 に変わったこと。 まぁほぼ Kindle なのだが,一応「達人出版会」や “O’Reilly Japan Ebook Store” 等の出版物も含めて,である。 紙の本は,技術解説本や本当に好きな一部の作家さん3 の「保存用」を除いてほぼ買わなくなった。
もうひとつは「本」を読まなくなったこと。
じゃあ,主に何を読んでるかというと Web 小説や Web 漫画である(もちろん「青空文庫」もね)。
私が Kindle でラノベを大量に(といっても今はたかだか10冊/月程度だが,ビンボー人だしw
)買うのは「Web 小説の SS が読みたい!」という動機が大きい。
「書籍化」は今や「アニメ化」や「ドラマ化」と同様の「作品のマルチ展開のひとつ」に過ぎなくなっているわけだ。 私は「読む」ことが好きなのでそれに傾倒しているが,おそらく世の中は映像や音声による「視聴」への需要が大きいんじゃないだろうか。
だから
とか
とかいったくだりを読んで「そりゃそーだ」と思ってしまう。
つまり「それ」がデジタル生まれなら,もはや「本」である必然性はないのだ。
日本の出版社も,客を犯罪者にでっち上げて機会損失の挙げ句にわざわざ売上を減らすような戦略は諦めて,かつ「紙」の制約から離れて,生き残るために腹を括ったほうがいいんじゃないだろうか。 そうしないと「次の10年」で「令和時代に書籍出版社は壊滅しました」なんてことになりかねないと思うのだが…
ブックマーク
参考図書
- アメリカの電子書籍“ブーム”は今 (カドカワ・ミニッツブック)
- 大原 ケイ (著)
- ブックウォーカー 2014-05-15 (Release 2014-05-15)
- Kindle版
- B00KAOQXTS (ASIN)
- 評価
『ルポ 電子書籍大国アメリカ』の続編的な位置づけ。2013年米国の出版状況の分析と今後についての予測。
- ルポ 電子書籍大国アメリカ (アスキー新書)
- 大原 ケイ (著)
- アスキー・メディアワークス 2010-09-09
- 新書
- 4048689606 (ASIN), 9784048689601 (EAN), 4048689606 (ISBN), 9784048689601 (ISBN)
- 評価
絶版ですってよ,奥さん。「電子書籍」の話なのに Kindle 化すらされず絶版するとか笑えないギャグである。当時の状況を伝えるいい本だと思うんだけどねぇ。達人出版会さんとか拾ってくれないかな(笑)
- シャーロック・ホームズ「赤毛連盟」
- アーサー コナン・ドイル (著), Arthur Conan Doyle (著), 三上 於菟吉 (翻訳), 大久保 ゆう (翻訳)
- でじじ発行/パンローリング発売 2007-05-01
- CD
- 4775929259 (ASIN), 9784775929254 (EAN), 4775929259 (ISBN)
- 評価
青空文庫に収録されているシャーロック・ホームズ・シリーズの翻訳を朗読する。第一弾は「赤毛連盟(Red-Headed League)」で佐々木健さんによる朗読。一人で何役もこなす佐々木健さんがかっこいい!
- 犬とハサミは使いよう (ファミ通文庫)
- 更伊 俊介 (著), 鍋島 テツヒロ (イラスト)
- KADOKAWA 2011-08-25 (Release 2012-09-07)
- Kindle版
- B009IMAGYQ (ASIN)
- 評価
犬になっても本を読む!
- 勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 1 (モーニングスターブックス)
- 灯台 (著), おちゃう (イラスト)
- 新紀元社 2017-06-22 (Release 2018-02-16)
- Kindle版
- B079SYC8TC (ASIN)
- 評価
読後の感想が「もげろ!」になった(多分)初めての作品。原作の Web 版は更に糖度高め。「砂糖を吐く」という比喩表現が理解できてしまった。もげろ!
- 数学ガール/フェルマーの最終定理
- 結城 浩 (著)
- SBクリエイティブ 2008-07-29 (Release 2014-03-12)
- Kindle版
- B00I8AT1CM (ASIN)
- 評価
「フェルマーの最終定理」というサブタイトルをみたとき「なんちう大風呂敷を広げるねん」と思ったものだが,実際に読んでみるとぐいぐい引き込まれる。ひっさびさに頭を使ったような気がする。
-
記事の内容とは全然関係ないのだが, HON.jp News Blog ってホンマにセンスないなぁ。今どき3ペインの画面構成とか(笑) 2ペインでもウザい感じなのに。しかもケータイで見ようとすると AMP ページに飛ばされる。滅びろ! AMP ↩︎
-
少なくとも日本では「電子書籍」という言葉は官製用語で,しかも相当胡散臭い代物なので,このブログでは使わないことにしている。 ↩︎
-
いや,まぁ,ぶっちゃけ竹本泉さんのことなのだが(笑) ↩︎