AI が特許権を得る日
Twitter の TL で見かけた記事。
詳しくはリンク先の記事を見てもらうとして,パッと見て変だと思うよね。 だって AI を発明者と認めて特許権を付与しても主張・行使できないぢゃん。 その辺どうなってるかというと
ということらしい。 こんなロジックを持ち出した理由は以下の通り。
「誰のものでもない」ものを機械が「発明」したとして,その機械の所有者が権利をガメるというのはアリなんだろうか。 新手のジャイアンか(笑)
記事中に登場する「自律」という単語で思い出すのは4年前に書いた読書感想文だ。
この中で「自立」と「自律」の違いについて
と紹介している。 そして,この定義でいくと現代において「自律」機械なるものは未だ登場していないことになる。 そうすると,最初の記事が指しているものは「自立」機械に過ぎないということになるが,ただの「自立」機械に権利を付与するのはやっぱり変な話に思える。
AI というバズワードを持ち出すまでもなく,自動作画とか自動作曲とかいった「自動機械」(ソフトウェアを含む)は昔からあって,この「自動機械」が創り出す表現なりアイデアなりが誰(何)に帰属するかについてもよく議論にのぼる。
たとえば,著作権に関しては
みたいな話もある。 ただし,特許権については先行者優位性の問題があり「先に機械に発明されたせいで人間側の優位性が潰されるのはかなわん」というのは心情的には分からないでもない。
あるいは,機械に知財権を付与できるならバンバン機械に発明させて知的独占を意図的に潰す,みたいな戦略もあるかもしれない(笑) そういやグレッグ・イーガンの『万物理論』では,最終的に万物理論の論文を書き上げるのは AI だったな。
参考図書
- そろそろ、人工知能の真実を話そう (早川書房)
- ジャン=ガブリエル ガナシア (著), 小林 重裕・他 (翻訳), 伊藤 直子 (監修)
- 早川書房 2017-05-25 (Release 2017-05-31)
- Kindle版
- B071FHBGW8 (ASIN)
- 評価
シンギュラリティは起きない。
- 〈反〉知的独占 ―特許と著作権の経済学
- ミケーレ・ボルドリン (著), デイヴィッド・K・レヴァイン (著), 山形浩生 (翻訳), 守岡桜 (翻訳)
- NTT出版 2010-10-22
- 単行本
- 4757122349 (ASIN), 9784757122345 (EAN), 4757122349 (ISBN)
- 評価
「知的財産権は、人類進歩を阻害する!」(帯文より)
- 万物理論 (創元SF文庫)
- グレッグ・イーガン (著), 山岸 真 (翻訳)
- 東京創元社 2004-10-28
- 文庫
- 4488711022 (ASIN), 9784488711023 (EAN), 4488711022 (ISBN)
- 評価
グレッグ・イーガンの名作。これも singularity を巡る物語だな。