オープンソースは砕けない

no extension

Log4j の対応に追われている現場エンジニアの皆様にお見舞い申し上げます。

こういうことが起きると

とか言い出す連中がいるわけで,ネタとしてはまぁまぁ面白いけど,食傷気味なところではある。 これらに対する反応としては Twitter TL で見かけた

あたりを強く支持する。

自由には責任が伴う。 何故なら社会集団を構成する私達にとって自由とは自明のものではないから。 「個人の自由」は私たちの人類社会が長い時間をかけて「勝ち取った」ものであり,近代の夢で,ネットが社会と接続した現代でもそれは同じである。

でも「フリーソフトウェア」をわざわざ「オープンソース・ソフトウェア」と言い直したのにはちゃんと意味があると思う。

ソフトウェアを自由に公開する意図は様々だ。 「それがぼくには楽しかったから」で産業構造をひっくり返す製品を送り出した人もいる。 また,何らかの社会的使命のもとに製品を作り続けている人もいるかもしれない。 あるいは私のように「独占する価値もないから」オープンソース・ライセンスを付けて公衆に放り出してるだけの人もいるだろう。

オープンソースの功績・貢献をお金に換えることについては昔から議論があるが,上述したようにオープンソースで括れるプレイヤーは本当に多様で,もちろん商業的な成功例はあるが,一般化できないように思える。

そもそも「オープンソースの功績・貢献をお金に換える」というのは問いの立て方として正しいのだろうか。

いま話題の log4j とか脆弱性発生時点でスポンサーが3人しかいなかったと騒がれている。

As of yesterday, there were a grand total of three sponsors for this person’s work.

GnuPG の作者である Werner Koch さんは一時期,経済的に困窮して GnuPG プロジェクトを放棄しようと考えていたことがあるそうな。 Linux Kernel なんてイレギュラー中のイレギュラーで,あんな奇跡は二度と起こらないと断言しておこう。 一時期はデジタル補完通貨1 と FinTech で皆ウハウハみたいな話もあったけど,あれって本当に儲かってるのは miner と山師だけでしょ(笑)

この業界に入るきっかけになった会社では色々なことを叩き込まれたが,その中のひとつに「仕事は終わらせるもの」というのがある。 どんな仕事にも終わりがあるし,真っ当に終わらせることで「次」に進むことができる。

離陸したならちゃんと着陸しないとね。 まぁ,エンジニアと違って経営者は着陸した先を考えるものだけど(笑)

一方で個人の趣味や興味で作ったものに対して,その趣味や興味が他所に移ったとして,そのことで批判を受ける義理はないよね。 でもそういったものでも社会的な影響力を持つと「やーめた!」で終わらせることが難しくなる。

私はオープンソース・プロジェクトの問題のひとつは「終わらせる」ことが難しいことにあるんじゃないかと思っている。

今の GitHub はアーカイブ機能でリポジトリを凍結させられる。 この機能によってプロジェクトを明示的に「終わらせる」ことができる。 これは結構重要な機能だと思う。

個人で無限の責任を負うことはできない。 それがたとえ自由の代償であってもだ。 責任を有限にするには「境界」を設定しなければならない。 それは時間軸についても同じ。 興味本位で始めたことであっても,死ぬまで同じプロジェクトに囚われるとか嫌過ぎる(笑)

ブックマーク

参考図書

photo
リナックスの革命 ― ハッカー倫理とネット社会の精神
ペッカ ヒマネン (著), リーナス トーバルズ (著), マニュエル カステル (著), 安原 和見 (翻訳), 山形 浩生 (翻訳)
河出書房新社 2001-05-26
単行本
4309242456 (ASIN), 9784309242453 (EAN), 4309242456 (ISBN)
評価     

大昔に買ったんだけどうろ覚え。買い直そうかと思ったが邦訳は Kindle ではないのか。それにしても「リナックスの革命」とかいう頭の悪いタイトルはどうにかならなかったのだろうか。副題だけで十分ぢゃん。

reviewed by Spiegel on 2020-12-12 (powered by PA-APIv5)

photo
もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来
yomoyomo (著)
達人出版会 2017-12-25 (Release 2019-03-02)
デジタル書籍
infoshare2 (tatsu-zine.com)
評価     

WirelessWire News 連載の書籍化。感想はこちら。祝 Kindle 化

reviewed by Spiegel on 2018-12-31

photo
いかにして問題をとくか
G. ポリア (著), Polya,G. (原著), 賢信, 柿内 (翻訳)
丸善 1975-04-01
単行本
4621045938 (ASIN), 9784621045930 (EAN), 4621045938 (ISBN)
評価     

数学書。というか問いの立てかたやものの考え方についての指南書。のようなものかな。

reviewed by Spiegel on 2014-09-26 (powered by PA-APIv5)

photo
ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない
小野友樹 (出演), 梶裕貴 (出演), 高木渉 (出演), 櫻井孝宏 (出演), 小野大輔 (出演), 津田尚克 (監督), ジョジョの奇妙な冒険DU製作委員会  (プロデュース)
(Release 2016-04-04)
Prime Video
B01DSV9KDU (ASIN)

実は見ていない(笑)

reviewed by Spiegel on 2021-12-14 (powered by PA-APIv5)


  1. 暗号通貨とか暗号資産とか言ってやらん(笑) ↩︎