【妄想】地球に知的生命体はいるか【与太話】
よーやく年末年始休暇に入りました。 歳をとると肉体労働も頭脳労働も辛くなるのです。 というわけで,仕事で凝り固まった脳みそを解きほぐすために,いつもの妄想というか与太話を一発。
皆さんは SETI または SETI@home というのをご存知(または覚えている)だろうか。
SETI は the Search for Extra-Terrestrial Intelligence の略称で日本語では「地球外知的生命探査」などと呼ばれている。 SETI@home は1999年1 から2020年まで行われた学術プロジェクトで,簡単に言うと「宇宙人を探すからオラに力を貸してくれ!」というものだ。 私も継続的に参加していた。
世界で最初に SETI に関する(「火星の運河」みたいな妄想・推論ではない)科学的実験・観測が行われたのは1960年の「オズマ計画」と言われている。 つまり地球人類は宇宙人をまともに探すようになってから60年以上かけて未だ発見できてないわけだ。 宇宙は広大である(笑)
それはともかく,もし「地球外知的生命」が私達の太陽系またはその惑星のひとつである地球を観測したとして,そこに「知的生命」または「知的文明」が存在すると認知・認識できるのだろうか?
この疑問に応える(かもしれない)作品が野尻抱介さんの『太陽の簒奪者』である。 今から見れば大昔の作品だし(初出は1999年で作品の舞台は2006年!の地球である),今更ネタバレでも大丈夫だろう。
『太陽の簒奪者』の大雑把なストーリーはこう:
太陽系にやってきた宇宙人が太陽を「ダイソン球」にするための改造を始める。 これに慌てた地球人が恒星改造を阻止するべく立ち上がった! これの大オチは件の宇宙人が太陽系に知的生命がいるとは気づかなかったというもの。 宇宙人は「地球人」を認知し別の星系へと旅立っていく。めでたしめでたし(笑)
どうやって宇宙人が地球人を認知するに至ったかというのはこの作品の肝となる部分なので,そこは実際に読んでお楽しみください。
『太陽の簒奪者』を読んだあと,こう思わなかっただろうか。 「私たち地球人類は『知的生命』と言えるのか?」
私は思った。
たとえば,機械を「知的生命」だと思う人はいないだろう。 どれだけ intelligence を組み込まれても,いくら「スマート」になったとしても機械は機械。 ましてやシンギュラリティなど起こるはずもない。
ちなみに私は「スマート・モブ」とか「スマート・ホーム」とか「スマート・シティ」とか言うフレーズが出た時の「スマート」を脳内で「都合のよい」と訳している。 どれだけの機能を組み込もうが「スマート(都合のよい)」が要件である以上,システムや機械は自身を逸脱することができない2。
ここで以前書いた「オープンソースは砕けない」で紹介したあの tweet が意味を持ってくる。
「自由」とはシステムからの逸脱(deviation)であり,逸脱は工学的には壊れているまたはバグってる状態である。
もうひとつ。 以前に「人の靭性」という記事も書いた。 この記事で言う「靭性」もまたシステムからの逸脱である。 もっと言うなら最近の流行り言葉である「多様性(diversity)」も一種の逸脱と言えるだろう。
逸脱の結果が良い方向に転べば礼賛されるし悪い方向に転べば罵倒される。 まるで発酵と腐敗の関係のようだ。 リスクを避けるなら発酵にも腐敗にも関わらず「スマート」になるのが一番である。 故に工学は「スマート」を善とするのである。
これもまた大昔と言っていいかもしれないが,当時の私はこう思っていた。
ここで先日 yomoyomo さんが書かれた以下の記事を思い出す。
しかし考えてみて欲しい。 今の「インターネット」はむしろ「スマート」な方向に爆走しているのではないだろうか。 「自由なソフトウェア」に責任を押し付け自由を後退させる「スマートなインターネット」。 著作権を盾に「自由な表現」を規制しテレビ化を推し進める「スマートなインターネット」。
それはただの「機械」であり,ならば大昔に私が考えた「The Net を自称する知性」というのは訂正すべきなのだろう。 人や人の社会が「スマート」を善とするなら,社会のメインプレイヤーが人である必然性はない。 とっとと機械に明け渡せばいいのだ。 むしろ人など居ないほうが sustainability が高いだろう。 それも進化というやつである(笑)
改めて問いかけよう。
地球に知的生命体はいるか?
参考図書
- ファースト・コンタクト―地球外知性体と出会う日 (文春新書)
- 金子 隆一 (著)
- 文藝春秋 1998-10-01
- 新書
- 4166600044 (ASIN), 9784166600045 (EAN), 4166600044 (ISBN)
- 評価
地球外文明探査の歴史を俯瞰する良書。是非ともデジタル化を希望する!
- 太陽の簒奪者
- 野尻 抱介 (著)
- 早川書房 (Release 2013-04-25)
- Kindle版
- B00CIMDKDC (ASIN)
- 評価
野尻抱介さんの作品群の中では好きなもののひとつ。 Kindle 版が出てたのでポチった。
- はやぶさ―不死身の探査機と宇宙研の物語 (幻冬舎新書)
- 吉田 武 (著)
- 幻冬舎 2006-11-01
- 新書
- 4344980158 (ASIN), 9784344980150 (EAN), 4344980158 (ISBN)
- 評価
宇宙研(ISAS)の歴史とともに日本の宇宙開発について解説する。
- メタファーとしての発酵 (Make: Japan Books)
- Sandor Ellix Katz (著), ドミニク・チェン (監修), 水原 文 (翻訳)
- オライリージャパン 2021-09-15
- 単行本(ソフトカバー)
- 4873119634 (ASIN), 9784873119632 (EAN), 4873119634 (ISBN)
版元でデジタル版も買える。てか,私は PDF で買っている。見事に積読状態。
- もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来
- yomoyomo (著)
- 達人出版会 2017-12-25 (Release 2019-03-02)
- デジタル書籍
- infoshare2 (tatsu-zine.com)
- 評価
WirelessWire News 連載の書籍化。感想はこちら。祝 Kindle 化!
reviewed by Spiegel on 2018-12-31