インターネット・キルスイッチ
皆さんは2010年代初頭に起こった「アラブの春」を覚えておいでだろうか。 チュニジアの「ジャスミン革命」に端を発し中東を中心に起こった一連の政変である。
「アラブの春」では SNS などを使った情報拡散が功を奏したと言われ何故か好意的な評価を受けているが,実際のところ「アラブの春」の一連で政治的に成功したと言えるのは最初のチュニジアの事例だけで,他の国は内戦もしくは内戦一歩手前の状態まで悪化し欧州に多くの難民が押し寄せる事態にまでなった。 更に言えば SNS などのメディアを使えば容易に情報操作と民衆の動員が可能であることが知られてしまい,今現在もインターネットは情報戦の泥沼の中にいる。
更に更に,別の面でもインターネットの脆弱性が浮き彫りになった。
というわけで長々と前説を述べたが,今回のケースも「インターネット・キルスイッチ」として深刻な話だと思う。
- プライベートを詮索し、冤罪で通報し、疑いが晴れてなおユーザを罰するGoogle――それを後押しする世界的潮流 | p2ptk[.]org
- Googleの冤罪通報問題から考える「ビッグテック解体への道筋」 | p2ptk[.]org
最初に挙げた「アラブの春」の例はどちらかと言うと国家が絡んでいるが,今回のケースは私企業が重要なライフラインを握ってしまい,カジュアルに「キルスイッチ」を入れてしまったのが問題と言える。
じゃあ ISP や Google のような企業から「公共事業」的な部分を取り上げてしまえばいいじゃないかと短絡的に考えてしまうが,そう簡単ではなさそうだ。
最後の「データや社会的つながりを犠牲にすることなく、簡単に離脱できるようにする」ってのが最重要ポイントなんだろう。
私達庶民から見れば「国家」も「市場」もプライバシーを含めた日常生活を脅かし得る脅威だ。 かといって私達には「リヴァイアサン」や「ビヒーモス」に立ち向かう力(power)は持っていない。 ならば「三十六計逃げるに如かず」あるいは「戦略的撤退」しかない。 そうしたリスクを見込んで「逃げ道」を用意しておくのが肝要だろう。
まぁ,簡単じゃないというか個人でどうにかなるとは思えないけどね。 やはり「怪獣大決戦」しかないのか。 それとも崑崙山で仙人にでもなるか(笑)
ブックマーク
参考図書
- サイバーセキュリティ (別冊日経サイエンス)
- 日経サイエンス編集部 (編集)
- 日本経済新聞出版社 2016-04-22 (Release 2016-04-22)
- ムック
- 4532512123 (ASIN), 9784532512125 (EAN), 4532512123 (ISBN)
- 評価
『日経サイエンス』2012年6月号の「介入されないもうひとつのウェブ」が収録されている。その他にも2010年代前半におけるセキュリティ問題についてよくまとめられている。
- グリゴリの捕縛
- 白田 秀彰
- 2001-11-26 (Release 2014-09-17)
- 青空文庫
- 4307 (図書カードNo.)
- 評価
白田秀彰さんの「グリゴリの捕縛」が青空文庫に収録されていた。
内容は 怪獣大決戦 おっと憲法(基本法)についてのお話。
古代社会 → 中世社会 → 近代社会 → 現代社会 と順を追って法と慣習そして力(power)との関係について解説し,その中で憲法(基本法)がどのように望まれ実装されていったか指摘してる。
その後,現代社会の次のパラダイムに顕現する「情報力」と社会との関係に言及していくわけだ。
reviewed by Spiegel on 2019-03-30 (powered by aozorahack)
- 【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 (新潮選書)
- 恵, 池内 (著)
- 新潮社 2016-05-27
- 単行本(ソフトカバー)
- 4106037866 (ASIN), 9784106037863 (EAN), 4106037866 (ISBN)
- 評価
欧州および中東の近代および現代を「サイクス=ピコ協定」を特異点として網羅的に解説していいる。
- CODE VERSION 2.0
- ローレンス・レッシグ (著), 山形浩生 (翻訳)
- 翔泳社 2007-12-19 (Release 2016-03-14)
- Kindle版
- B01CYDGUV8 (ASIN)
- 評価
前著『CODE』改訂版。