「プラットフォームとフェデレーションとの競争」
念のため予防線を張っておくと,私は日本で Mastodon が台頭し始めた2017年春に「GW 過ぎたらみんな忘れてるに100カノッサ」と書いて,見事に賭けに負けた人間である。 まぁ,私自身はつい最近まで本当に忘れていたのだが(笑)
というわけで, Mastodon マンセー! とか言うつもりはないのであしからず。
ActivityPub 連合
Mastodon アカウントを復活させてから,あちこち覗いて回っている。 特に以下の記事は2017年よりあとの(特に日本語圏での)状況を知るのに役に立った。 ありがたや 🙇
この記事にも出てくる ActivityPub の W3C 勧告(Recommendation)は 2018-01-23 にリリースされている。
これに先立ち,2017年秋ごろには Mastodon や PeerTube でも実装されていたようだ。 更に2018年以降 Misskey, Pleroma, Pixelfed といったあたりが対応をはじめた。 更に更に,昨今の「Twitter お家騒動」を受けて Tumblr が ActivityPub に対応すると表明し,我らが Flickr も検討に入ったらしい。
正直に言って「Flickr 対応するかも」というのは心が揺れた。 もしこれが実現するなら SNS 活動の軸足を Fediverse へ移してもいいかもしれない。
EFF による Mastodon/ActivityPub/Fediverse 解説
昨今の状況を受けて EFF (Electronic Frontier Foundation) も解説記事を出した。
- Leaving Twitter’s Walled Garden | Electronic Frontier Foundation
- The Fediverse Could Be Awesome (If We Don’t Screw It Up) | Electronic Frontier Foundation
- Is Mastodon Private and Secure? Let’s Take a Look | Electronic Frontier Foundation
Fediverse とは federation と universe を組み合わせた造語だそうな。 たとえば Mastodon はそれ自体が連合(federation)型の分散システムだが,そうしたサービス同士が更に緩くフラットに結びついた状態を指すらしい。
これら連合型システムを結びつける技術要素のひとつが ActivityPub というわけだ。 ぶっちゃけ,どこぞの FinTech 山師が叫ぶ Web3 より,こっちのほうがよほど次期 Web ぽいよな(笑)
EFF の解説記事では従来の Facebook や Twitter といったサービスを「プラットフォーム」あるいは「中央集権」型に分類し Fediverse と対置しているのが面白い。 Mastodon 等は単なる「代替サービス」ではないということだ。
その上で既存プラットフォームに対して辛辣な評価を下す。
こうしたプラットフォーム型サービスに対する失望感(絶望感?)が今回の「Twitter お家騒動」より派生する諸々の出来事の背景にあるのかもしれない。 そして最後に EFF はこう断ずるのである。
一方で Fediverse に対しても
と釘をさしている(強調は私がやりました)。 その上で「連合システムの運用者と利用者に期待される選択肢」として以下を挙げている。
- コンテンツ・モデレーションに関するサンタクララ原則を採用する
- コミュニティ/ローカル・コントロール
- コンテンツ・モデレーションのイノベーション
- 無数のアプリケーション
- リミックス可能性
- 多様な資金援助モデル
- グローバルなアクセシビリティ
- 政府からの干渉への抵抗/ユーザの側に立つこと
- 真の連合
- 相互運用性と次の囲い込みの阻止
- 反競争的行為の阻止
- ポータビリティ
- 委任可能性(delegability)
詳しくは元記事を参照のこと。
最後の「反競争的行為の阻止」「ポータビリティ」「委任可能性」3つは “Embrace, Extend, and Extinguish" (EEE)” のカウンタかな。 つか「取り込み、拡張し、抹殺する」とか物騒なフレーズがあるんだな(笑)
「プラットフォームとフェデレーションとの競争」
コンピュータおよびコンピュータ・システムの歴史は集中と分散の繰り返しである。 ネットも同じ。 プラットフォーム間の覇権争いに巻き込まれてウンザリしたユーザが緩い連合型システムに流れるのも自然なことのように思える。
しかし,これまで見たように Mastodon は Twitter の代替にはなりそうもない。 Twitter から Mastodon に逃げたユーザが,自分たちの「Twitter 文化」を振りかざして迷惑をまき散らしているという話もちょいちょい聞く1。 リアルの「移民問題」と似たような話がネットでも出てくるというのは興味深い。
Fediverse が「素晴らしいもの」になるか否かが「“私たち”次第」ということは,言い方を変えれば Fediverse は属人性の強い壊れやすいシステムであるということだ。
EFF の解説記事はこう締めくくる。
ここで EFF が「競争(competition)」と言っていることには意味があると思う。
「文化とは文化の
ブックマーク
参考文献
- もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来
- yomoyomo (著)
- 達人出版会 2017-12-25 (Release 2019-03-02)
- デジタル書籍
- infoshare2 (tatsu-zine.com)
- 評価
WirelessWire News 連載の書籍化。感想はこちら。祝 Kindle 化!
reviewed by Spiegel on 2018-12-31
- イノベーション 悪意なき嘘 (双書 時代のカルテ)
- 名和 小太郎 (著)
- 岩波書店 2007-01-11
- 単行本
- 4000280872 (ASIN), 9784000280877 (EAN), 4000280872 (ISBN)
- 評価
「両用技術とはどのようなものか。その核心には「矛と楯の論理」がある」(まえがき「予断・診断・独断 そんなばかな」より)
- 著作権は文化を発展させるのか: 人権と文化コモンズ
- 山田 奨治 (著)
- 人文書院 2021-07-29 (Release 2021-07-29)
- Kindle版
- B099RTG3J7 (ASIN)
- 評価
著作権を「ユーザーの人権」という観点から捉え直す。その後 文化→コモンズ→文化コモンズ と進み,本当の意味で「文化の発展に寄与する」とはどういうことか考察していく。
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私もちゃんと振る舞えているか自信がない。昔の人は言いました。「3年ROMれ」と。 ↩︎