「本を読む」職業というものはない

no extension

起点はこの tweets から(続くスレッドも併せてどうぞ)

たとえば「読書」への関心度を「冊数」や「読書時間」で量ろうとする統計をよく見かけるが,書籍出版社や本屋の陰謀じゃないかと邪推したりする(笑)

『Effctive Java』や『プログラミング言語Go』の翻訳でおなじみ柴田芳樹さんは,自書の読書会を定期的に行っておられる。 2023年2月からはいよいよ『Linuxシステムの仕組み』の読書会が始まる。

これ,索引を除くと450頁以上ある上に文字数が多い! 月1回の読書会で読み終わるのに1年くらいかかるんじゃないかと言っておられた。

読書会とか輪読回のいいところはゴールが分かりやすいところだ。 とにかく1冊まるまる読み終えたらゴール。 寄り道もOK。

私だけの悪癖なのかもしれないが,仕事用の技術参考書は知らないところをつまみ食いして「読んだことにする」ことが多い。 いや,最初にざっと流し読みはするんだよ。

でも,読書会は少なくない人数で同じものを同時に読む。 みんなと一緒に読むから積ん読になりにくい。 他にも,私自身が「知ってる」からと読み飛ばしてた部分に着目する人がいて,それについて検討し始めると,実は私も「解ってない」ことが多々あることに気づく。 これを面白いと思うようになってからは,都合がつく限り参加するようにしている。

これ,他の作家さんもやればいいのに(やっておられるかもしれないが)。 技術参考書以外でもできると思うよ。 まぁ,主催するほうはファシリテーターも兼ねることが多く,大変だと思うけどね。

著者も出版社も,読書に関心を持ってもらいたいなら,そのための努力をしろよ。 上述のようなオンライン読書会でもいいし,学校や図書館に置いてもらって接触機会を増やすとかでもいいだろう。 過去の絶版著作を Web とかでまるっと公開する手もある。 存在を知らない本は読めないのだよ。

とはいえ,読書のやりかたは人それぞれ。 量で評価するのはナンセンスな話である。 「本を読む」職業というものはなく,量をこなせばいいものでもない。 「正しい読み方」などないのだ1

私は参考書に関しては,難し目の本を最初に買って,それを理解するための副読本をいくつか買う(あるいは図書館で借りる)というスタイルを好む。 同じ頁を何度も読み返したり,しばらく本から離れてクールダウンさせた後に読み直すこともある。 技術参考書は PDF で買えることが多くなったので狭い本棚を圧迫せずに済んでいる2(魔窟化の回避)。 一方で漫画やラノベは乱読で,目に付いた面白そうなタイトルを Kindle や Web 連載で片っ端から読む。 近年のお気に入りは悪役令嬢恋愛ラノベだ(笑) いわゆる「文芸作品3」に関しては学生時代に「受験対策で読むもの」という刷り込みが入ってるので,社会人になってからはほぼ読まなくなった。

というわけで,たくさん読む人が偉いわけではない。 読書に多くの時間を割く人が偉いわけでもない。 買った本が自分にとってつまらないと思うなら,わざわざ dis らなくても,そっとブックオフにでも売り飛ばせばいい(つまらないことを「つまらない」と言うことほどつまらないことはない)。 本や読書にアイデンティティを求める必要はない。

私は本好きなので,その人にとって,たった1冊でも sense of wonder を与えてくれる作品があるなら,幸せな出会いだと思っている。 作家や書籍出版社に忖度する必要もないのだ。

本は楽しく読みましょう。

参考図書

photo
スーパーユーザーなら知っておくべきLinuxシステムの仕組み
Brian Ward (著), 柴田 芳樹 (翻訳)
インプレス 2022-03-08 (Release 2022-03-08)
単行本(ソフトカバー)
4295013498 (ASIN), 9784295013495 (EAN), 4295013498 (ISBN)
評価     

版元で PDF 版が買える。セキュリティ・エリアにも持ち込めるよう紙の本を買ったのだが,オンライン読書会が始まったので PDF 版も購入。Linux システムの扱い方に関するリファレンス本として優れている。最初に軽く流し読みして,必要に応じて該当項目を拾い読みしていけばいいだろう。

reviewed by Spiegel on 2023-02-11 (powered by PA-APIv5)

photo
残り一日で破滅フラグ全部へし折ります 1 ざまぁRTA記録24Hr. (FLOS COMIC)
天城 望 (著), 福留 しゅん (その他)
KADOKAWA 2022-06-17 (Release 2022-06-17)
Kindle版
B0B33Z9F22 (ASIN)
評価     

ラノベのほうは展開のスピード感があって面白かったが,絵がつくとまた違うねぇ。

reviewed by Spiegel on 2022-06-17 (powered by PA-APIv5)

photo
悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です! 11 (カドカワBOOKS)
明。 (著), 秋咲 りお (イラスト)
KADOKAWA 2023-01-10 (Release 2023-01-10)
Kindle版
B0BQH9LFC8 (ASIN)
評価     

ついに最終巻! って,後日談は書かないのかな?

reviewed by Spiegel on 2023-01-21 (powered by PA-APIv5)


  1. 読解力はまた別の話。『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』によると「読書の好き嫌い、科目の得意不得意、1日のスマートフォンの利用時間や学習時間などの自己申告結果と基礎的読解力には相関はない」らしい。 ↩︎

  2. 私は帰郷時に殆どの紙の本と本棚を捨てたので,紙の本を買うのは割と最後の手段。 ↩︎

  3. うろ覚えで申し訳ないが「文芸作品」の定義は「文芸雑誌に載っている作品」で「文芸雑誌」の定義は「文芸作品を集めた雑誌」とかだった気がする。なにその循環参照って思ったことがある。 ↩︎