月の標準時を決めよう

no extension

この時期にこんな話題とか体のいい政治宣伝にしか見えないけど,そういう話も出てるよ,ということで。

これによると

This policy directs NASA to work with the Departments of Commerce, Defense, State, and Transportation to deliver a strategy for the implementation of LTC no later than December 31, 2026. NASA will also coordinate with other federal agencies as appropriate and international partners through existing international forums, including Artemis Accords partner nations.

ということで,2026年中に NASA 主導で LTC (Coordinated Lunar Time) の実施に向けた戦略を策定する,とのこと。 なんとも気の長い話である。

地球では標準時として UTC (Coordinated Universal Time; 協定世界時) というのがある。 これは時間の刻みは TAI (International Atomic Time; 国際原子時) に合わせつつ,時刻は UT (Universal Time; 世界時) との差が1秒以内になるよう調整された時刻系である。 ちなみに TAI は座標時系の一種である TT (Terrestrial Time; 地球時) と連動していて

\[ TT = TAI + 32.184\,\mathrm{sec} \]

という関係である。 さらに言うと TT の定義は「地球表面上で歩度SI秒となる一様な時刻」となっている1

座標時系は相対論効果を含んでいるため,当然ながら,どの天体を基準にするかで時間の流れが変わる。 身近な例でいうと,地表の原子時計と GPS 人工衛星の原子時計の間にはほんの僅かな進み遅れがあるし,国際宇宙ステーション(ISS)と地表との間にも差異がある。 もちろん地球と月の間にも差異はある。 人類が宇宙開発を進め地球外に進出するのであれば,こうした差異を精密に測定し各天体ごとの時刻系を決める必要がある。

というわけで,最初の記事に戻る。 まぁ,今年の大統領選挙で共和党候補が勝ったら無かったことにされる気がするけどな(笑)

ブックマーク

参考

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理科年表 2020
国立天文台 (編集)
丸善出版 2019-11-20
文庫
4621304259 (ASIN), 9784621304259 (EAN), 4621304259 (ISBN)
評価     

日本における令和への改元や国際単位系(SI)の定義改定などに関するトピックを多く掲載。2020年版は(保存用として)買いかも。

reviewed by Spiegel on 2019-12-08 (powered by PA-APIv5)

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天文年鑑 2024年版
天文年鑑編集委員会 (編集)
誠文堂新光社 2023-11-24 (Release 2023-11-24)
単行本
4416623410 (ASIN), 9784416623411 (EAN), 4416623410 (ISBN)
評価     

天文ファン必携。2024年版。これが届くと年末って感じ。

reviewed by Spiegel on 2023-11-25 (powered by PA-APIv5)

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天体物理学
Arnab Rai Choudhuri (著), 森 正樹 (翻訳)
森北出版 2019-05-28
単行本
4627275110 (ASIN), 9784627275119 (EAN), 4627275110 (ISBN)
評価     

興味本位で買うにはちょっとビビる値段なので図書館で借りて読んでいたが,やっぱり手元に置いておきたいのでエイヤで買った。まえがきによると,この手のタイプの教科書はあまりないらしい。内容は非常に堅実で分かりやすい。理系の学部生レベルなら問題なく読めるかな。

reviewed by Spiegel on 2019-11-13 (powered by PA-APIv5)


  1. 厳密な TT 定義はもう少し複雑で地球重心座標時(TCG)を基にしたジオイド面で考えるのだが,実際にはジオイド面では十分な精度を得られないそうで,ちょっと面倒そうな変換式をかませるようだ。この辺の話は最近の「理科年表」に解説があるので興味のある方はそちらをどうぞ。 ↩︎