(マス)メディアの未来

no extension

今は良くも悪くも双方向メディアの時代だ。 誰もが発信者になれて誰もが視聴者(=消費者)になれる。 一部のプロのジャーナリストや評論家が消費者に向かって一方的に「お下知」する時代ではないのだ。 それでも情報の透明性や信頼性を担保する存在として「プロ」の意義がある,と私は思っている。 ジャーナリストこそ「狂狷の徒」であるべきなのだ。 故に次に来るのは,そうした「狂狷の徒」達の活動を如何にして収益化するか,という話になる。

というわけで,以下の面白い記事を紹介する。

後者の記事では翻訳者が冒頭に

本稿はVice Mediaの崩壊について書かれたコラムだが、Viceの崩壊により生み出された404 Mediaについては、WirelessWire Newsに掲載された論考「ジャーナリスト自身が運営する404 Mediaにみる『オルタナメディア』の可能性」が大変に面白かったので、ご一読をおすすめしたい。

などと書いていて笑ってしまった。 返歌だな,これ。

Viceは死ぬべくして死に、404 Mediaは生まれるべくして生まれた」はSF作家のコリイ・ドクトロウ氏らしい盛大な dis り記事で,これだけ読むと心が荒んでしまうので,是非「ジャーナリスト自身が運営する404 Mediaにみる「オルタナメディア」の可能性」のほうをメインに読んでいただければと思う。

私はテレビや新聞といった「古き良き」メディアに対して完全に見切りをつけているが,さりとてそれらに代わる特定のメディア(のビジネスモデル)があるようには思えない。 結果,酷く狭い情報環境のなかにいる自覚はある。 近年は YouTube の動画配信も少しずつ見るようになったが,テレビで言うところの「ワイドショウ」や「バラエティ」番組と同程度がせいぜいという感じ。 しかも YouTube の動画配信では信頼性を担保するものが何も示されないので,結局「ふーん」で終わってしまう。 まぁ,ゲーム配信や雑談配信ならそれで十分なんだけどね。

既存のニュースサイトが生成的アルゴリズムによってナンセンスでスパムまみれになるほど、つながりや人間性を強く望むオーディエンスは、リアルなものを提供する、書き手の顔が見えるメディアに自然と引き寄せられるというわけです。そしてもっと重要なのは、ニュースオタクとしては普通の人たちが、こうしたオルタナメディアの仕事に価値を見出し、有料購読者になっていることです。

「消費者」の私としては,ビュッフェ形式であちこちのメディアをつまみ食いしつつ,情報摂取の総コストに怯えつつ,その場しのぎでやるしかないんだろうなー,とか思ったりする。

有料購読者によって成り立つウェブメディアが、単発的でなく「ムーブメント」と言えるあたりまで来るかとなると、英語メディアのようなワールドワイドな読者層が期待できず、人口減少が続く日本では難しいと思うのも正直なところです。

私はお金持ちじゃないし情報処理能力も大したことないので,総ての有料メディアにお金を払って総ての情報を摂取して評価するとか,全く以って無理なわけっスよ。 で,どのメディアにお金を払うか悩んで,結局「ふりだしに戻る」になってしまう。 難儀な時代になってしまったよな。

そうそう。 最後の方の

大手新聞社が2020年代にもなって「「エビデンス」がないと駄目ですか?」と寝ぼけたことをぬかし、最近も「その「エモい記事」いりますか」とナラティブ重視の記事によるアクセス稼ぎに苦言を呈される現状を見れば、日本でも「新たなオルタナメディア」が成立する余地はあると思いますし…

の部分はちょっと笑ってしまった。 ホンマ,日本の(マス)メディアはク◯だよな。 昨今の米不足についても「テレビが騒ぎすぎて,テレビで騙された高齢者が「お米がなくなるんじゃないか」と店舗に殺到したんじゃないか」とか YouTube で言われてまっせ。 知らんけど。

ブックマーク

参考

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もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来
yomoyomo (著)
達人出版会 2017-12-25 (Release 2019-03-02)
デジタル書籍
infoshare2 (tatsu-zine.com)
評価     

WirelessWire News 連載の書籍化。感想はこちら。祝 Kindle 化

reviewed by Spiegel on 2018-12-31

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フィルターバブル──インターネットが隠していること (ハヤカワ文庫NF)
イーライ・パリサー (著), 井口耕二 (翻訳)
早川書房 2016-03-09
文庫
4150504598 (ASIN), 9784150504595 (EAN), 4150504598 (ISBN), 9784150504595 (ISBN)
評価     

ネットにおいて私たちは自由ではなく,それと知らず「フィルターバブル」に捕らわれている。

reviewed by Spiegel on 2016-05-07 (powered by PA-APIv5)

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つながりっぱなしの日常を生きる:ソーシャルメディアが若者にもたらしたもの
ダナ・ボイド (著), 野中 モモ (翻訳)
草思社 2014-10-09 (Release 2015-07-21)
Kindle版
B0125TZSZ0 (ASIN)
評価     

読むのに1年半以上かかってしまった。ネット,特に SNS 上で自身のアイデンティティやプライバシーを保つにはどうすればいいか。豊富な事例を交えて考察する。

reviewed by Spiegel on 2016-05-10 (powered by PA-APIv5)

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グリゴリの捕縛
白田 秀彰
2001-11-26 (Release 2014-09-17)
青空文庫
4307 (図書カードNo.)
評価     

白田秀彰さんの「グリゴリの捕縛」が青空文庫に収録されていた。 内容は 怪獣大決戦 おっと憲法(基本法)についてのお話。 古代社会 → 中世社会 → 近代社会 → 現代社会 と順を追って法と慣習そして力(power)との関係について解説し,その中で憲法(基本法)がどのように望まれ実装されていったか指摘してる。 その後,現代社会の次のパラダイムに顕現する「情報力」と社会との関係に言及していくわけだ。

reviewed by Spiegel on 2019-03-30 (powered by aozorahack)