数学は美しいか — 『数学ガール/リーマン予想』を読む(夏の読書感想文3)

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個人的にこの夏の課題図書だった『数学ガール/リーマン予想』をようやく読み終わったですよ。 いつの間に発売日を忘れてて, Kindle 端末にダウンロードされてたのにしばらく気づかず(予約はしてた),その後も私的な事情で後回しにしてたら8月終わるぢゃん!

というわけで今週に入って慌てて読み始めた。 この記事を以って今年の「夏休みの読書感想文」は完了である。 あまり内容に踏み込むことは書かないようにしているが,ネタバレチックな記述もちらほらあるので,そこはご容赦を。

人生王道は学園ラブコメ

読後,というか読み始めから感じていたが

!!!甘酸っぺぇ!!!

昔は「人生王道は学園ラブコメ」(by 竹本泉)とか言ってたのに「数学ガール」シリーズ以外に(マンガでもラノベでも)学園ラブコメ読まなくなっちゃったよ。 つか「学園ラブコメ」ってジャンルは今もあるのだろうか。

その「数学ガール」シリーズもこれで最終巻。 最初の書籍版『数学ガール』が出たのが2007年で,あれから18年も経った。 学園ものということもあり,作中時間は主人公「僕」が高校1年の春から卒業までの約3年間。 巻数にして7巻。 他にも「数学ガールの秘密ノート」シリーズなどスピンオフ作品もあり Web 連載も続いている。 「数学ガール」自体は書籍版前から不定期に公開されてたしな。 物凄く息の長い作品である。

最近のラノベでは珍しいかもしれないが,作中では一貫して「僕」の視点・主観で物語が進行する(第三者視点の描写もなし)。 他のミルカさんやテトラちゃんなどの登場人物は「僕」の認知フィルタを通してしか垣間見ることができないというのが想像力を掻き立てるし,同じ視点が続くのに中弛みしないってのはホンマに凄いと思う。

再読しなきゃ

今回のテーマになっている複素関数やリーマン予想など数学寄りの話題は,多分どなたかが感想なり解説なり書いておられるだろうからここでは書かない。 まぁ,いつものことだが(笑)

数学ガール/リーマン予想』ではいつにも増して「「数学ガール/○○」を参照」という脚注が多いように見える。 まさに集大成って感じ。 言い換えると,この1冊では完結しない内容なのよ。 数学成分をちゃんと理解したいなら,少なくとも「数学ガール」シリーズは全部読み返す必要があると思う。 読み返すなら紙とペンが必要だな(またはタブレットとペン?)。

ソフトバンク・クリエイティブ様におかれましては「数学ガール」シリーズおよび「数学ガールの秘密ノート」シリーズの PDF 版をリリースしてもらえないでしょうか。 きょうび技術解説書は PDF 版が当たり前ですし,複数の書籍を横断的に読むには Kindle はもちろん紙の本でも不便なのですよ。 勉強はデジタルな環境でできるのに,教科書は紙か DRM でガチガチに固められた似非デジタル本というのはニンともカントも(ただのラノベやマンガなら Kindle でもいいんだけど)。 「数学ガール」シリーズは数学入門書としても優れていると思うので,是非 PDF 版を!

数学は美しいか

数学ガール/リーマン予想』に限らず「数学ガール」シリーズでは数学の「美しさ」がテーマのひとつになっていると思う。 でも何を以って「美しい」というのだろう。

個人的に推し VTuber のひとりである「儒烏風亭らでん」は「美術鑑賞は経験で観る」と言っている。

10章のクライマックスで「僕」を始めミルカ,テトラ,ユーリ,リサの主要登場人物が揃って「リーマン予想」を始めとする数学議論を始めるが,各キャラで数学の知識背景・理解度が異なるため議論されるトピックに対する反応も異なっている。 これは面白い描写だなぁと思って読んでいた。 私なんか最年少のユーリちゃんの立ち位置に近く,10章は(ユーリちゃんと同じく)議論の筋を追うので精一杯だったよ。 複素関数とか真面目に勉強しなかったもんなぁ,学生時代。

私が「数学ガール」シリーズを読んでいつも思う感想は「結城浩さんの本はよく整備された遊歩道を散歩するような気楽さと安心感がある」なのだが「遊歩道を散歩」ってのは体験で経験そのものなんだよね。

実家に帰郷 (かえ) って自転車を再開して自力で行ける範囲が少しずつ広がって。 そうすると周囲の風景に目が向く余裕ができてくる。

田んぼ道 | Flickr

こういった見渡す限り田んぼの風景は私の子供時代の原風景と直結していて,だからこそ心が動くのかもしれない。

「数学ガール」シリーズの凄いところは,物語を通じて数学や数学の歴史を(追)体験できる点だと思う。 それによって私達読者も登場人物(の誰か)と体験を共有できる。 その体験を通じて数学の「美しさ」も共有できるかもしれない。

「美しい」とは何だろう。 知性の片鱗か。 それとも症状か。

着地点のその先へ

数学ガール/リーマン予想』の(数学以外の)テーマのひとつは卒業・進学・将来への期待と不安といったところだろう。 いやぁ,ホンマ甘酸っぱいなぁ(笑)

IT 業界に入って最初の会社のボスには色々なことを教わった。 たとえば「従業員は着地点を目指して仕事をするが,経営者は着地点の先を見ている」とか。 まぁ,大昔のことだからね。 今のシステム開発はイテレーションが普通だし,着地点だけ見ていてはダメだろうけど。

6章に対数関数のリーマン面が出てくるが,上手い暗合だなと感じた。 そもそも「リーマン予想」という未解決の問題を大テーマに掲げて「将来への期待と不安」と対比させているのが秀逸。 日常と結びついた知識・経験は強く心に残るよね。 それこそが「美しい」と感じる源泉なのか?

私が学生の頃は何も考えてなかったな。 一応「受験戦争」世代なんだけどねぇ。 まぁ,歳とると辛かったことの記憶は薄れてしまうらしいし,本当は色々考えていたのかもしれないけど。

人生はスタートの連続である。 「人は皆 終わりと始まりの狭間」にいる。 よい読書体験でした。

参考

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数学ガール/リーマン予想 【電子特典付き】
結城 浩 (著), たなか鮎子 (イラスト)
SBクリエイティブ 2025-08-07 (Release 2025-08-07)
Kindle版
B0F625LQB8 (ASIN)
評価     

「数学ガール」シリーズ最終巻。甘酸っぺぇ! 感想はこちら。 Kindle 版はおまけのお話がついていてお得。

reviewed by Spiegel on 2025-08-29 (powered by PA-APIv5)

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数学ガール
結城 浩 (著)
SBクリエイティブ 2007-06-26 (Release 2014-03-12)
Kindle版
B00EYXMA9I (ASIN)
評価     

ミルカさんとの衝撃の encounter。数学ガールがワルツを踊る。

reviewed by Spiegel on 2014-02-14 (powered by PA-APIv5)

photo
ミッドサマーシトラス
ReGLOSS (メインアーティスト)
cover corp. 2025-07-11 (Release 2025-07-11)
MP3 ダウンロード
B0FGXSM5LL (ASIN)
評価     

青くんがおる! MV を見て衝動買い。 mora で高解像度版が買える。夏の歌というか(あの頃の)夏を振り返る歌って感じだろうか。よき!

reviewed by Spiegel on 2025-07-12 (powered by PA-APIv5)

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落噺 (儒烏風亭らでん SOLO)
ReGLOSS (メインアーティスト)
cover corp. 2025-08-03 (Release 2025-08-03)
MP3 ダウンロード
B0FKB9Y1GL (ASIN)
評価     

「おとしばなし」と読むらしい。語るように歌い,歌うように語る。「儒烏風亭らでん」らしい秀逸な作品。 mora で高解像度版が買える。

reviewed by Spiegel on 2025-08-03 (powered by PA-APIv5)

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エルの唄~メリナ Full ver.~
村川梨衣 (メインアーティスト)
WFRecords 2021-06-23 (Release 2021-06-23)
MP3 ダウンロード
B0964KPJ24 (ASIN)
評価     

ゲーム「アナザーエデン」の挿入歌。「アナザーエデン」の中でも好きなエピソード。

reviewed by Spiegel on 2022-08-22 (powered by PA-APIv5)