サプライズと迷惑の谷間
ノーベル賞の話題は年末に入る前のお祭りみたいなものだが(権威に興味がないので私はスルーだけど),今年は以下の話が面白かった。 テレビメディアの記事だし,いずれ削除されると思うけど,ちょっと笑ってしまったので引用しておく。
ラムズデル博士は、携帯電話を機内モードにしていたということで、アメリカメディアによりますと、ノーベル委員会側が博士に接触できたのはおよそ20時間後だったということです。
またもう一人の受賞者であるメアリー・ブランコウ博士も、ノーベル委員会からの最初の電話について「スウェーデンからの番号だったので迷惑電話だと思い、電話を切り再び眠りについた」と明かしています。
なんちうか,現代において「電話」が如何に厄介な存在か分かるわ。
迷惑電話といえばこんな記事もある。
この記事の最後のほうに
- 「050」から始まるIP電話は取らない
- 「+1」「+44」など、海外発信の国際電話は取らない
- 「0800」からのフリーダイヤルは取らない
- 「知らない番号は取らない」
一見、極端なように思えるが、筆者の周囲でも実践している人は多い。もはや「電話には一切出ない」という人までいる。実際には「050」はIP電話の電話番号だし、「0800」はフリーダイヤルなので、すべてが怪しいわけではない。それでも、自衛のためにこうした番号からの電話は受けないという人は珍しくない。
と書かれていて激しく同意してしまった。 「0800」とかパッと見はケータイ番号かと思うぢゃん。 誰だよ,あれをフリーダイヤルの番号に決めたのは。 悪意あるダークパターンじゃないなら「悪い UX」ってやつだ。
電話システムの欠点は明らかで
- ID (電話番号) を知っていれば誰でも何時でも予告なしに発呼できる
- 着呼したらその場で出ないと通話が成立しない
の2つ。 特に最初のは致命的で,携帯電話の普及でひとりにひとつ以上の電話番号が「装備1」されるようになり番号を知られるリスクが増した。 だから自身の電話番号を必要以上に知られたくないし,もし知らない番号からかかってきても無視するのが「正しい」態度になってしまう。 電話でサプライズとか通用しない世の中になってしまったわけだ。
まぁ,そもそもケータイの電話機能を使わなくなったよね。 普段のやり取りはメールかチャットで済ますし,仕事でも今は Zoom や Teams や Slack 等で(音声での会話も含めて)足りている。 ゲームなら Discord か? ほぼ使わないけど。
逆に SNS は「知り合い同士で繋がる」サービスではなく不特定に向けたメディアになった(「友達ダイアグラム」とか言ってた Web 2.0 の頃が懐かしい)。 かつて知り合い同士で写真共有を行うサービスだった Instagram も
- インスタグラムが、アプリを開くとすぐにリールが表示される新たなフィードをテスト中だ。
- ユーザー数30億人を誇るインスタグラムは今後、DMとリールに注力する。
- 友人に向けて写真を投稿するインスタグラムとはお別れだ。安らかに眠れ!
だそうだ。 私は既にアカウントを削除しているので関係ないけど。 でも SNS でサプライズとかやっても詐欺扱いかなやっぱり。
「知り合い同士で繋がる」なら SNS ではなくチャットサービスでグルーピングするか,同好の士(笑)によるマッチングサービスを利用する感じだろうか。
ともかく,来年からはノーベル賞受賞者に電話で連絡とか止めた方がいいよ。
参考
- はじめて学ぶ ビデオゲームの心理学 脳のはたらきとユーザー体験(UX)
- セリア ホデント (著), 山根 信二(監修) (著), 山根 信二 (翻訳), 成田 啓行 (翻訳)
- 福村出版 2022-12-15 (Release 2023-07-03)
- Kindle版
- B0C9Z7KGRN (ASIN)
- 評価
Kindle 版が出ている。ゲームデザイナやゲームエンジニアだけでなく,ソフトウェア・エンジニアは全員読むべき。あと,ゲーマーな人も読むといいよ。感想はこちら。
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昔は携帯端末のことを UE (User Equipment) と呼んでいた。今も言うのかな。 ↩︎