Streamplace と Livepeer
前回の続き。
というか,前回の記事が思ったより長くなったのと,話の中心が Streamplace のほうに横滑りしそうになったので記事を分けたのだった。
Livepeer について
Streamplace の話をする前にバックエンド(基盤技術)のひとつである Livepeer について説明しておこう。
Livepeer は Ethereum blockchain 上に構築された分散型のビデオインフラストラクチャ・プラットフォーム,だそうだ。 Blockchain 関連は Ethereum が登場するあたりからどんどん興味が薄れていったのだが,こんなまともそうなものもあるんだ。
Livepeer は以下の疑問が出発点となり,2017年に設立されたらしい。
What if video - the most captivating, expressive medium online - ran on open, permissionless infrastructure instead of expensive, proprietary systems?
Since its launch in 2017, Livepeer’s mission has been to deliver affordable, performant open video & AI infrastructure rooted in decentralised video technology enabled by cryptoeconomic primitives.
Doug and Eric set out to revolutionise video streaming infrastructure from the hardware infrastructure up by:
- Turning idle GPUs around the world into a competitive marketplace,
- Using crypto-economic incentives to guarantee reliability and quality,
- Delivering measurable cost reductions via decentralised economies of scale.
Livepeer の特徴について Kagi Assistant にまとめてもらった。
- 分散型トランスコーディング
- 動画配信で最もコストがかかる「トランスコーディング(動画を視聴者の環境に合わせた形式に変換する処理)」を、世界中のコンピューター(ノード)に分散して実行させます
- これにより YouTube や AWS などの巨大な中央集権的サーバーを利用するよりも大幅に低コストで配信インフラを構築できます。
- ネットワークの参加者
- オーケストレーター(Orchestrators): 自分のコンピューターのリソース(CPU/GPU)を提供して動画処理を行い報酬を得る参加者です。
- デリゲーター(Delegators): 自分が持つ LPT トークンを信頼できるオーケストレーターに預け(ステーキング)、ネットワークのセキュリティに貢献しながら報酬の一部を受け取る参加者です。
- LPT (Livepeer Token)
- Livepeer の独自トークン「LPT」は、ネットワークの調整、ガバナンス、およびセキュリティ維持のために使用されます。
- AI との統合
- 最近ではビデオ配信だけでなく、分散型 GPU リソースを活用した AI 推論(リアルタイムのビデオ生成や加工など) のインフラとしても機能を拡張しています。
- 開発者向けツール
- 開発者が自分のアプリに簡単にビデオ機能を組み込めるよう、SDK や「Livepeer Studio」といったホスト型プラットフォームも提供されています。
だいたい合ってる? Streamplace や Livepeer 周辺で Web3 が云々とか聞こえてきたのはそういう訳だったんだねぇ。
Streamplace について
ここで Streamplace が登場する。 Streamplace は2024年後半にパイロット版が公開され,2025年の ATmosphereConf のライブ配信に採用されて注目を集めた。 2026年の ATmosphereConf でも Streamplace によるライブ配信が行われていた(まぁ,私はそれで知ったのだが)。
Streamplace は,この Livepeer が提供する強力な分散型ビデオ処理能力をバックエンド(基盤)として利用することで特定の企業に依存しない自由な配信プラットフォームを実現する,ということのようだ。 前回の記事でも挙げたが「特定の企業」のひとつである YouTube と Streamplace との比較を再び挙げておく(AI による要約なので鵜呑みにしないように)。
| 比較項目 | Streamplace | YouTube |
|---|---|---|
| 運営形態 | 分散型(特定の企業に依存しない) | 中央集権型(Google が運営) |
| 基盤技術 | AT Protocol / Livepeer ネットワーク | Google 独自のクローズドなインフラ |
| ソースコード | オープンソース(誰でも利用・改善可能) | 非公開(プロプライエタリ) |
| データの所有権 | ユーザー自身(自己主権型アイデンティティ) | 運営企業(Google) |
| 主な目的 | 分散型 SNS 向けのビデオインフラ提供 | 広告収益を主とした動画共有サービス |
| 検閲・制限 | プロトコルレベルでの検閲は困難 | 運営企業のポリシーにより削除・停止あり |
| 主な利用者層 | Web3 開発者,分散型 SNS ユーザー | 一般消費者,クリエイター,広告主 |
もちろん,基盤技術として AT Protocol (Authenticated Transfer Protocol) が使われているのもポイントで,つまり Streamplace は「万能アカウント(The Everything Account)」上のアプリケーション(のひとつ)である,とも言えるわけだ(分散サービスではあるが,匿名サービスではない)。
The Atmosphere, as you can see above, already has countless apps you can use. There are Twitter-like apps such as Bluesky and Blacksky; blogging services like Leaflet, Offprint, and pckt; collection and annotation tools like Semble, Margin, and Seams; and I can go on and on because the ecosystem is expanding by the day. And this is just a small portion of the existing Atmosphere - I couldn’t fit all of the different apps because there are just. so. many.
なお VOD (Video on Demand) については,この記事を書いてる時点でまだ開発・テスト中の段階らしい。 特にフロントエンド側が未整備のようで,私達一般ユーザが利用できるのはまだ先のようだ。
Livepeer が分散ネットワークであるということは Streamplace はセルフホストしないといけないのか? と一瞬思ったが,一般ユーザ向けには Streamplace 公式の環境(stream.place)が用意されている(使い方は前回記事参照)。
組織向けや自前で動画配信プラットフォームを構築したいユーザはセルフホストもできますよ,というスタンスみたい1。
Streamplace がもっと注目されれば(今 PDS サーバがボコボコ立ち始めているように)一般ユーザが選択可能なインスタンスがもっと増えるのかも知れない。
Streamplace のマネタイズってどうなってるの?
でも,そうなると stream.place のマネタイズってどうなってるのか気になる。
ベンチャーキャピタルから資金調達しまくって,挙げ句の果てにメタクソ化か? とか意地悪なことも考えたが,ちょっと違うらしい。
Streamplace は Livepeer Treasury から助成金を受けて開発を行っているらしい(LPT 払い?)。 Livepeer にとって Streamplace はエコシステム上の「公共財(public good)」と見なされていて, Streamplace を育成することが Livepeer エコシステムの拡大に繋がると考えているようだ。
一方 Streamplace 側は Gateway ビジネスモデルによるマネタイズを将来的に考えているらしい。 アーキテクチャと支払いフローはこんな感じ。
flowchart LR subgraph ApplicationLayer [Application Layer] direction TD A1["User Apps\nWeb, Mobile,\nTouchDesigner"] end subgraph GatewayLayer [Gateway Layer] direction TD A1 --> J[Job Intake] J --> A1 G1["Capability Discovery"] G2["Pricing & Selection"] G3["Routing / Session Mgmt"] end subgraph OrchestratorLayer [Orchestrator Layer] direction TD J --> GW[GPU Worker] GW --> J AI["AI Models / BYOC\nContainers"] T[Transcoder] end style ApplicationLayer stroke:#3cb540,stroke-width:2px style GatewayLayer stroke:#3cb540,stroke-width:2px style OrchestratorLayer stroke:#3cb540,stroke-width:2px
flowchart LR A["End users / \nApplications"] G["Gateway"] O["Orchestrator"] W["Transcoder / \nAI Runner"] C["Arbitrum \n(on-chain)"] R["Gateway revenue"] A -- "Pay gateway's rate \n(business layer)" --> G G -- "Pay network rate \n(ETH payment tickets)" --> O O -- "Pay workers" --> W O -- "Redeem tickets" --> C G -- "Keep margin" --> R
この “End users” は配信者を指すのか? 視聴者も含むのか?
上の図は Streamplace を含む Livepeer エコシステムに対する支払いモデルだ。 でも,これだと最終的にかかるコストを配信者と視聴者の間でどう配分するかについて不透明な感じがする(見落としがあったらゴメン)。 一応
- アプリ開発者や配信者が使用したリソース分を支払う従量課金モデル(クラウド資源利用とかでよく見る方式)
- 高度な機能や安定した帯域を保証する代わりに視聴者が一定額を支払うサブスクリプションモデル(Amazon Prime Video や Netflix みたいな感じ)
とかいった方法で収益化を行うことを考えてるみたいだけど…
YouTube などは基本的にオーディエンスの規模が大きいほど(視聴者への接触機会が多いほど)配信者が稼げる構造になっているが,広告モデルであるが故に配信者も視聴者もコストを払っている感覚が薄い(スパチャのような投げ銭に近いものもあるが)。 そういう意味でも YouTube は現代版「テレビ」なんだよなぁ。
動画配信に限らないけど,こういうのって
P2P や Web3 などに興味のある人にとっては注目すべき点もあろうが,一般のユーザにとっては「もうしばらく様子見かな」といったところか。 やっぱ VOD 機能が正式にサービスインされないと是とも非とも言えないなぁ。
でも,私みたいに今まで「配信」とは無縁だった周回遅れの人が「ちょっとやってみようかな」と思える程度にはなっているかな。
暗号通貨/資産はゼロサムゲームか?
私個人の感覚で申し訳ないが, Livepeer が Ethereum blockchain 上に構築されていると聞いて身構えてしまうのは「暗号通貨/資産って,結局のところゼロサムゲームなんじゃないの?」と思ってしまうからだ。 特に NFT (Non-Fungible Token) とか極まってるよね。 生成 AI が登場して,そちらに興味が移ったら,あっという間に廃れたけど(笑)
…ていう雑談を Kagi Assistant としてたのだが AI 曰く
なんだそうな。 確かに NFT には「実需」はなかったな。 LPT はどうなんだろう。 Livepeer エコシステムを通じて何かしらの「実需」を創造できるのだろうか。
ブックマーク
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Livepeer 技術・仕組みの解説
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仮想通貨・金融メディアによる解説
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ブログ・ガイド記事
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なお,セルフホスト用に Docker 環境が用意されているそうな。 WebRTC を利用するので(UDP ポートをいっぱい開ける),その辺の知識がないと難しいかも。 ↩︎

