大雨? 豪雨?
2つの台風の接近と,それに伴う梅雨前線の活性化であっちこっちで大雨になってるみたい。 松江市内は普通に梅雨空だけど,大雨にやられている方々にはお見舞い申し上げます。
Mastodon や Bluesky の自 TL を眺めてて気がついたのだが,割とお手軽に「豪雨」という単語が使われている印象。 そういえば「豪雨」って気象用語としての基準があったっけ? と思って簡単に調べてみた。
豪雨?
気象用語というか「気象庁が天気予報等で用いる予報用語」として「豪雨」は以下のように定義されている。
著しい災害が発生した顕著な大雨現象。
「○○豪雨に匹敵する大雨」等著しい災害が発生し命名された大雨災害の名称か、もしくは地域的に定着している災害の通称(例:東海豪雨)の名称を引用する形で用いる。一般に発表する予報や警報、気象情報等では、「豪雨」単独では用いない。
- 著しい災害とは、激甚災害、命名された大雨災害。
- 既に命名された現象もしくはそれに匹敵する過去事象に対する使用に限定する。
- 命名の目安は「浸水家屋10000棟」等。
降水 | 気象庁より
もの凄く簡単に言うと「豪雨」というのは実被害を伴う災害級の大雨を指す言葉のようだ。 実際には激甚災害に指定された大雨災害を指すのかな。 だから「豪雨」は降雨の量を指すのではなく,多分に政治判断が伴っている(激甚災害指定がそもそも政治判断によるところが大きい)。 この辺は「豪雪」と似た構造だな(実際に「豪雪」項目には「豪雨に準じた用い方をする」と書いてある)。
過去5年間の激甚災害については内閣府に資料があった。
これによると
- 「令和三年五月十一日から七月十四日までの間の豪雨による災害についての激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」について
- 「令和三年八月七日から同月二十三日までの間の暴風雨及び豪雨による災害についての激甚災害並びにこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」について
- 「令和四年七月十四日から同月二十日までの間の豪雨による災害についての激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」について
- 「令和四年八月一日から同月二十二日までの間の豪雨及び暴風雨による災害についての激甚災害並びにこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」について
- 「令和四年九月十七日から同月二十四日までの間の暴風雨及び豪雨による災害についての激甚災害並びにこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」について
- 「令和五年五月二十八日から七月二十日までの間の豪雨及び暴風雨による災害についての激甚災害並びにこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」について
- 「令和五年九月四日から同月九日までの間の豪雨及び暴風雨による千葉県夷隅郡大多喜町等の区域に係る災害についての激甚災害並びにこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」について
- 「令和六年六月八日から七月三十日までの間の豪雨による災害についての激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」について
- 「令和六年八月二十六日から九月三日までの間の暴風雨及び豪雨による災害についての激甚災害並びにこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」について
- 「令和六年九月二十日から同月二十三日までの間の豪雨による災害についての激甚災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」について
- 「令和七年八月五日から九月二十一日までの間の豪雨及び暴風雨による災害についての激甚災害並びにこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」について
といったあたりに「豪雨」の単語が見える。 なお,元号と西暦の対応は以下の通り(マジで元号やめて欲しい)。
| 元号 | 西暦 | 元号 | 西暦 | |
|---|---|---|---|---|
| 令和3年 | 2021年 | 令和6年 | 2024年 | |
| 令和4年 | 2022年 | 令和7年 | 2025年 | |
| 令和5年 | 2023年 | 令和8年 | 2026年 |
これを見ると2022年と2024年はかなり激しかったんだな。 とにかく,ただの大雨に対してカジュアルに「豪雨」と言うのは避けたほうがよさそうだ。
集中豪雨? 局地的大雨?
「気象庁が天気予報等で用いる予報用語」には解説用語として「集中豪雨」というのがあり「同じような場所で数時間にわたり強く降り、100mmから数百mmの雨量をもたらす雨」と定義されている。 少し前までは「ゲリラ豪雨」というのもあったが「使用を控える用語」として「局地的大雨」や「集中豪雨」といった言葉に言い換えられているらしい。 「局地的大雨」は「急に強く降り、数十分の短時間に狭い範囲に数十mm程度の雨量をもたらす雨」と定義されている。 そういえば「ゲリラ豪雨」って聞かなくなったな。 「集中豪雨」も元はマスコミ用語だったはずだけど一般的になりすぎて解説用語にせざるを得なかったんだろうなぁ,と邪推してみたり。
集中豪雨と局地的大雨の使い分けについては国交省に資料(2010年)があった。
これによると
「集中豪雨」とは、線状の降水帯が数時間停滞することで、大雨が集中して降るものです。降水帯は、50〜300キロメートル×20〜50キロメートルの広さに及びます。梅雨の時期や9月に見られます。
これに対して「ゲリラ豪雨」とは。私たちの言い方では「局地的大雨」と呼びますが、散在する降水域で、20〜30キロメートル四方の広さに点在します。5月や夏に目立ちます。
などと書かれている。 これらも降雨の量に関する基準はないらしい。 現象を指す言葉というわけやね。
大雨?
「豪雨」に対して「大雨」は降雨現象そのものを指すようで,「気象庁が天気予報等で用いる予報用語」には
災害が発生するおそれのある雨。
気象庁HPの過去の気象データ検索の天気概況については、該当期間に30mm以上の雨の場合に記述される。
降水 | 気象庁より
と書かれている。 「大雨」と対になる言葉として「小雨」は「数時間続いても雨量が1mmに達しないくらいの雨」とある。
実際の天気予報では「大雨」という言葉はあまり使わないようで
用語 説明 弱い雨 1時間雨量が3mm未満の強さの雨。 やや強い雨 1時間に10mm以上20mm未満の雨。 強い雨 1時間に20mm以上30mm未満の雨。 激しい雨 1時間に30mm以上50mm未満の雨。 非常に激しい雨 1時間に50mm以上80mm未満の雨。 猛烈な雨 1時間に80mm以上の雨。
降水 | 気象庁より
といった使い分けをするらしい。
面白いのが「雨が強くなる」というフレーズに対して「「強い雨」が降るようになること」と書かれていて,「雨が激しくなる」には「「激しい雨」が降るようになること」と書かれている。 今度,天気予報で大雨の予報を聞く機会があったら注意してみよう。
参考
- 気象がわかる数式入門
- 二宮 洸三 (著)
- オーム社 2006-07-01
- 単行本
- 4274202712 (ASIN), 9784274202711 (EAN), 4274202712 (ISBN)
- 評価
気象に入る前に「次元」や「単位系」といった基本中の基本の話から始まり,そこから誤差論(の最初のほう)とかだんだんと核心に入っていく。順番に読んでいけば無理なく「気象」を始めとする物理学の初歩が理解できるよう構成されている教科書的な内容。これが私の子供の頃にあったらなぁ。

