ベテルギウスの息継ぎ

no extension

昨年末から「ベテルギウス暗くね?」という話題を私の TL でも時々見かけるようになった。

一応の解説をしておくと,ベテルギウスは冬の代表的な星座であるオリオン座の肩のあたりにある赤くて明るい星で,分類としては「赤色巨星」と呼ばれる終末期の恒星だ。 先日買った理科年表 2020』によると(早速役に立ったw)地球からは約500光年離れている1

ベテルギウスは脈動変光星としても知られている。 「脈動変光星」というのは星自体が膨張・収縮したり表面の形状が変わることで明るさが変化する恒星のことである。 ベテルギウスは星自体が膨張・収縮する「動径脈動」と呼ばれるものの一種だそうだ。

「動径脈動」は変光範囲や周期がだいたい決まっている。 で,今回のベテルギウスは従来の規則性を超えて大きく減光したため「何かあった(またはある)んじゃねーの?」という話になったわけだ。

一時期,増光に転じて底を打ったかと思われたが

あれからまた減光に転じて以前よりも更に暗くなっているようだ(2020-0129 追記)。

更に別の記事では

However, as pointed out by others, the current fainting episode could also arise from expelled, cooling gas/dust partially obscuring the star. The recent changes defined by our V-band/Wing photometry seem best explained from changes in the envelop-outer convection atmosphere of this pulsating, unstable supergiant. If these recent light changes are due to an extra-large amplitude light pulse on the ~420-day period, then the next mid-light minimum is expected during late January/early February, 2020. If Betelgeuse continues to dim after that time then other possibilities will have to be considered. The unusual behavior of Betelgeuse should be closely watched.
via ATel #13410: The Continued Unprecedented Fading of Betelgeuse

とある。 息継ぎみたいなものかねぇ(笑) もうしばらくは注視したほうがいいか。

しかし,まぁ,ぶっちゃけた結論を言うと「まだあわてるような時間じゃない」ということだ。

ここ1週間くらいのメディア報道を見かけるに,今にも超新星爆発が起きるみたいな言いかたをしているが,そんなこと言い出したらどれだけの星が候補に上がることやら。 ちなみに2020年版の「天文年鑑」に2018年7月から2019年7月までに観測された超新星の一覧が載っているが,全部で1,988個もある。 どう? 一気にレアリティが下がったでしょ(笑)

確かに500光年という「ご近所2」で超新星爆発が見られて,その過程において新しい知見が得られるかもしれないというのは,私も天文ファンの端くれとしてワクワクする。 それが明日か百年後か十万年後かは分からないけど,気なが〜に期待しましょう。

ブックマーク

From Betelgeuse’s surroundings to its surface - YouTube

参考図書

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理科年表 2020
国立天文台 (編集)
丸善出版 2019-11-20
文庫
4621304259 (ASIN), 9784621304259 (EAN), 4621304259 (ISBN)
評価     

日本における令和への改元や国際単位系(SI)の定義改定などに関するトピックを多く掲載。2020年版は(保存用として)買いかも。

reviewed by Spiegel on 2019-12-08 (powered by PA-APIv5)

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天文年鑑 2020年版
天文年鑑 編集委員会 (編集)
誠文堂新光社 2019-11-20
単行本
4416719485 (ASIN), 9784416719480 (EAN), 4416719485 (ISBN)
評価     

天文ファン必携。2020年版。

reviewed by Spiegel on 2019-11-23 (powered by PA-APIv5)

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天体物理学
Arnab Rai Choudhuri (著), 森 正樹 (翻訳)
森北出版 2019-05-28
単行本
4627275110 (ASIN), 9784627275119 (EAN), 4627275110 (ISBN)
評価     

興味本位で買うにはちょっとビビる値段なので図書館で借りて読んでいる。まえがきによると,この手のタイプの教科書はあまりないらしい。内容は非常に堅実で分かりやすい。理系の学部生レベルなら問題なく読めるかな。

reviewed by Spiegel on 2019-11-13 (powered by PA-APIv5)


  1. 理科年表 2020』に書かれている厳密な数値は498光年だが10%以上の誤差を含むとの注釈が付けられている。「理科年表」に掲載されている恒星のスペックは2007年の改訂ヒッパルコス星表をベースにしているそうで,距離に関しては年周視差から算出している。 ↩︎

  2. たとえば,カミオカンデによってニュートリノが検出された最初の例となったマゼラン星雲の SN 1987A は168k光年離れている。 ↩︎