【再掲載】 「アリスはふしぎの国で」(アーサー・ラッカム挿絵版 公開記念)

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青空文庫のブログ2020年7月までのアクセスが報告されている。

非常事態下の5月に比べればアクセス数は下回っているが,それでも7月時点で前年比120%を維持している。

ぶっちゃけ SARS-CoV-2 感染リスクより,それを忌避するための抑圧的行動のほうがリスクになりかかってる気がするが,まぁ,しょうがないかも。 ワクチン供給が始まれば,少なくとも今の狂「躁鬱」状態は収まると思うが…

ところで,上述の記事を見てたら「アリスはふしぎの国で」が新規公開作品のランキングに載っている。 あれ? 大久保ゆうさん翻訳の「アリスはふしぎの国で」は5年前に公開されてたよなぁ, と思ったら「アーサー・ラッカム挿絵版」らしい。

アーサー・ラッカム氏自身は1939年に亡くなられているので,彼の業績は既に公有となっているわけだ。

というわけで,記念として5年前に本家サイトで書いた記事を再構成してお送りする。


青空文庫の新着情報で大久保ゆうさんの「アリスはふしぎの国で」がリリースされているのを知った。

これはルイス・キャロルさんの「不思議の国のアリス」の大久保ゆうさんによるオリジナル翻訳である。 これに先立ち(Alice’s Adventures in Wonderland の草稿版とも言われる) ALICE’S ADVENTURES UNDER GROUND の翻訳である「アリスの地底めぐり」も2年前に青空文庫でリリースされている1

で,面白いのはここから。

大久保ゆうさんは aozorablog のなかで,2つの作品を比較した論考を書かれている。

他人の頭の中を覗く機会なんて滅多にあるもんじゃない。 それがルイス・キャロル,大久保ゆう両氏の頭の中を垣間見れるなんてラッキー! たとえば

タイトルは「アリスはふしぎの国で」としました。もはや趣味の問題ですが、前から妙に思っていたのが、Alice in Wonderland はアルファベット順だと〈A〉、つまりいちばんはじめの文字のところにあるのに、『ふしぎの国のアリス』だと五十音で半分よりも後ろにあるじゃないか、ということ。Aから始まるものなので、やっぱり〈あ〉から始まってほしいな、と思ったのです。
それと、このタイトル略形の Alice in Wonderland ってフレーズ、なんだかそのあとに動詞が置けそうな、アリスを主語にしてそのまま文章が続けられそうな気がするな、と前々から感じておりまして。なので「アリスはふしぎの国で」としておくと、そのまま文をつなげていけそうな雰囲気にもなるので、そうしてみました。

てな感じ。 私は文芸センス皆無なので,素直に「ほほう」と感心してしまった。

それからは仕事の合間にこの連載を読みながらニヤニヤしてた(気持ち悪いやつに見えただろうなぁ)。 はっきり言って,このブログ連載は個人的に2015年前半の No.1 テキストと断言しよう。

実は随分昔に買った「地下の国のアリス」の翻訳本が手元にある。 翻訳者は「書籍情報社編集部」となっていて,1987年に初版が出ている(私の手元にあるのは1988年第6刷)。 大久保ゆうさんの「アリスの地底めぐり」がリリースされたときは,この手元の本と読み比べて楽しんだりした。

「不思議の国のアリス」は単独でも面白い作品だが,こういう読み方ができるというのもまた楽しい。 みなさんもお楽しみあれ。

参考図書

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アリスはふしぎの国で
原題: ALICE IN WONDERLAND
キャロル ルイス, 大久保 ゆう (翻訳)
2015-07-04 (Release 2015-07-16)
青空文庫
57320 (図書カードNo.)
評価     

「不思議の国のアリス」の大久保ゆうさんによるオリジナル翻訳。 「不思議の国のアリス」の草稿版とされる「アリスの地底めぐり(ALICE'S ADVENTURES UNDER GROUND)」も公開されている。 さらにアーサー・ラッカム挿絵版も公開された。

reviewed by Spiegel on 2020-08-10 (powered by aozorahack)

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不思議の国のアリス・オリジナル
ルイス・キャロル (著), Lewis Carroll (原著), 高橋 宏 (翻訳)
書籍情報社 2002-12-01
単行本
4915999106 (ASIN), 9784915999109 (EAN), 4915999106 (ISBN)
評価     

2002年に出た復刻版らしい。原書(のコピー)と翻訳書の2冊セット。

reviewed by Spiegel on 2020-08-10 (powered by PA-APIv5)


  1. 念のため書いておくが,ルイス・キャロルさんの一連の著作については著作権が失効しているが,その翻訳作品は当然ながら翻訳者に権利が帰属する。大久保ゆうさんは,青空文庫に提供している翻訳作品については Free Culture License(厳密には CC license の「表示  」)で公開されている。 ↩︎