技術的負債とハッカー
最近,立て続けに「技術的負債(technical debt)」という単語を見かけたので。
- お前も技術的負債にしてやろうか! もしくは技術的負債と和田卓人さんをめぐるシンクロニシティ - YAMDAS現更新履歴
- 【翻訳】技術的負債という概念の生みの親 Ward Cunningham 自身による説明 - t-wadaのブログ
- 技術的負債の優先順位について論文を読んでみた
私も気軽に「技術的負債」という単語を使うが,どうも「技術的負債」自体は単に「そういう事象」を指すものであって,良いとか悪いとかの評価の外にあるようだ。
つまり,ソフトウェアを「早く作る」ことと引き換えにしたものを金融用語の「負債」に喩えているだけで,それをどう返済(=リファクタリング)していくか(あるいはなぜ返済できないのか)についてはまた別の話,ということのようだ。
念の為に言うとハッカー気質(hacker ethic) 的には「早く作る」ことは美徳とされているし「早く作る」ことと「雑に作る」ことはイコールではない。 早く作って評価(試)してみて,そこから改良(=リファクタリング)していって限りなく「完成」へ収束していくのである。
言い方を変えるなら,「ソフトウェアは常にベータ版」であり,その「ベータ版」から理想とする「完成版」への差分が「負債」である,とも解釈できる。
ふむむむむ。
それを踏まえて
という話にはなんだか既視感がある。
というわけで過去の 黒歴史 日記を掘り返してみたら15年も前に
とか書いてた。 あぁ,これと相似形か。
「ハッカー」という単語も,元々は良いも悪いもない,単に「そういう人」を指す言葉だったが,いったんネガティブなイメージが付くとそれを払拭するために強弁する人が現れてだんだん意味が発散し,挙げ句の果てには「ホワイトハッカー」とか意味不明の言葉が登場したりする。
“ur-technical debt” ちうのもその類の話なのだろう。 まぁ,今後は「技術的負債」とか迂闊に口にせんことやね(笑)
ブックマーク
過去に書いたこの辺の記事も黒歴史になるかな(笑)
参考図書
- リナックスの革命 ― ハッカー倫理とネット社会の精神
- ペッカ ヒマネン (著), リーナス トーバルズ (著), マニュエル カステル (著), 安原 和見 (翻訳), 山形 浩生 (翻訳)
- 河出書房新社 2001-05-26
- 単行本
- 4309242456 (ASIN), 9784309242453 (EAN), 4309242456 (ISBN)
- 評価
大昔に買ったんだけどうろ覚え。買い直そうかと思ったが邦訳は Kindle ではないのか。それにしても「リナックスの革命」とかいう頭の悪いタイトルはどうにかならなかったのだろうか。副題だけで十分ぢゃん。