オープンソース製品とソフトウェア部品表
拙作の depm で利用している github.com/google/licenseclassifier パッケージの v2 系モジュールがいい感じにバージョンが上がってきたので,どのくらい使えるようになったのか試してみた記事がこれ。
で,この記事について有り難くも「SPDX License identifier にも触れて欲しい」というリクエストを頂いたので SPDX (Software Package Data Exchange) についてちょろんと紹介する文章を追記した。 これを書くためにサイトを眺めて初めて気がついたのだが SPDX が ISO/IEC 5962:2021 として標準化されていたらしい。
ISO/IEC 5962:2021 がリリースされたのが2021年8月。 その年の年末に例の Apache Log4j の脆弱性に端を発したソフトウェア・サプライチェーン脆弱性の問題が大きく取り上げられることになった。
どーりで今年(2022年)に入ってやたらと「ソフトウェア部品表(Software Bill of Materials; SBOM)」の話を聞くようになったわけだ。
更にタイミングのいいことに7月下旬に以下の記事が公開されていたのを yomoyomo さんの記事で知った。
- Open-Source Security: How Digital Infrastructure Is Built on a House of Cards - Lawfare
- Securing Open-Source Software - Schneier on Security
- オープンソースのセキュリティ:デジタルインフラは砂上の楼閣に築かれている? - YAMDAS現更新履歴
個人的には FOSS 製品を「公共財」と見なす向きには違和感や危うさを感じてしまうのだが,もはや四の五の言ってられねー,って感じなのだろう。 せめて SPDX が SBOM の標準としてセキュリティ・リスク管理に上手く組み込まれることを期待したい。
報告される脆弱性の量的評価としての CVSS,ソフトウェア・サプライチェーンの構成を可視化する SPDX/SBOM,脆弱性が報告された際のアクションを支援する SSVC1 といった道具・手段を組み合わせて,脆弱性報告から対応までのワークフローがスムーズに流れるようになるといいなぁ,と思ったり。 まぁ,そのワークフロー自体がソフトウェア・サプライチェーンだったりするのだが(笑)
しかし,ブログってのはこういう粗結合連鎖が面白いと思うのだが「ブログの退潮」はもはや避けられぬか(笑)
Synk と SBOM
開発者向けのセキュリティ関連サービスを提供している Synk は SPDX/SBOM について以下のように述べている。
Microsoft と SBOM
忘れていたが Microsoft も SBOM を自動生成するツールを OSS で出してたんだっけ。
- Microsoft open sources its software bill of materials (SBOM) generation tool - Engineering@Microsoft
- マイクロソフト、ビルド時にソフトウェアの部品表(SBOM)を自動生成する「SBOM Tool」、オープンソースで公開 - Publickey
まぁ,メインの文章でも紹介したように「SBOM をどう使うか」が重要なんだけどね。
ブックマーク
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SSVC(Stakeholder-Specific Vulnerability Categorization)を活用した脆弱性管理 | PwC Japanグループ
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IPAがセキュリティ情報の収集ツール「mjcheck4」を公開 ~Adobe AIR製の旧版は廃止 - 窓の杜 : SBOM をインポートできるらしい
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経済産業省、「ソフトウェア管理に向けたSBOM(Software Bill of Materials)の導入に関する手引」公開。環境構築、SBOM作成、運用管理など解説 - Publickey
参考図書
- セキュリティはなぜやぶられたのか
- ブルース・シュナイアー (著), 井口 耕二 (翻訳)
- 日経BP 2007-02-15
- 単行本
- 4822283100 (ASIN), 9784822283100 (EAN), 4822283100 (ISBN)
- 評価
原書のタイトルが “Beyond Fear: Thinking Sensibly About Security in an Uncertain World” なのに対して日本語タイトルがどうしようもなくヘボいが中身は名著。とりあえず読んどきなはれ。ゼロ年代当時 9.11 およびその後の米国のセキュリティ政策と深く関連している内容なので,そのへんを加味して読むとよい。
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SSVC (Stakeholder-Specific Vulnerability Categorization) については “Prioritizing Vulnerability Response: A Stakeholder-Specific Vulnerability Categorization (Version 2.0) ” あたりを参照のこと。 ↩︎