ChatGPT という壁打ち

no extension

先日から『はじめて学ぶ ビデオゲームの心理学』という本をちょっとずつ読み始めている。 この本の感想はいずれ書くとして,この本に

ビデオゲームをはじめ各種のゲームは、ツールでないという点で、ほかの製品と少し違います。ビデオゲームは外部の目標に向かってプレイするものではなく、プレイ自体が目的になる、自己目的的な活動です。私たちはゲームを通じてシステムに働きかけ、その反応を楽しみます。

と書かれているのを見て,その前に見た

という tweet を思い出した。

もの凄い個人的な意見を言わせていただければ AI でプログラマが失業するかもしれないなんて話は完全に想定内なのよ。 つい40年前には「キーパンチャー」とか「コーダー」とかいう(今は絶滅した)職業が存在してたんだぜ。 プログラマみたいな(頭脳)労働集約的な職業が近い将来なくなったとしても全く不思議ではないだろう。

たとえば「Linux のメンテナを AI に一任することになりました」とか「Eマスク氏が AI を使って Twitter を自分好みに全面改修しました」みたいな話が起きれば本格的に(職業をかわるという意味での)転職を考えないといけなくなるだろうが,たかだか学部生の宿題レベルが解ける程度なら,鼻の先は驚異でも脅威でもない(日進月歩という意味では凄いと思うけど)。

話が逸れた。 逸れたついでに…

恥ずかしながら中学時代はテニス部だったのだが1,運動神経が壊滅してる私は「壁打ち」で練習することが多かった。 「壁打ち」って奥が深いよね。 どの方向にどういう強さ打って,球にどう回転を加えれば,思い通りの球が返ってくるか。 まさに物理学だよね。

私の中で ChatGPT は何となく「壁打ち」なイメージなんだよなぁ。 インプットに対するアウトプットを見ながら次のインプットを調整していく。 フィードバックを行うのは機械(=壁)じゃなくて人間のほうだよね。

というような思いつきを Mastodon に投稿したら

というリアクションをいただいた。 ありがたや。

結城浩さんといえば最近

というのを公開されていて,これは凄いと思った。 対話というのはお互いの間で「文脈(context)」を生成・共有する必要があるが,パッと見た限りでは両者の間に「文脈」があるように見える。 もっとも ChatGPT については

なんだそうで,そうなると少なくとも ChatGPT 側は「文脈」と言えるものを持ってないことになる?

「ゲーム」の面白さのひとつは,「ゲーム」というブラックボックスに対して何某かの入力を行いそれに対する反応をフィードバックして次の入力を行う,という繰り返しで対象への「理解」を深めることにあり,それ自体が目的化している点にあると思う。

何だかよく分からないものを理解していくというプロセスは,自身の「『有能さ』への欲求」を満たす行為であり,まさに「ゲーム」に対する内発的動機になり得るものだ。

であるなら ChatGPT も「仕事に使えるか?」とか要らないことは考えずに,純粋に「ゲーム」だと思えば楽しく遊べるのではないか,と考えを切り替えることにした。 競馬の予想屋と大して変わらないなんちゃらアナリストの発言に右往左往するのはもう止めよう。

というわけで,改めて(Google アカウントではない)アカウントを作ってみた。 Subscription で決済が発生するのなら Google アカウントは使いたくなかったので。 まずは無料枠分で「壁打ち」するところから始めようか(笑)

年齢に関わらず、遊びは私たちの精神を鋭敏に保つために重要です。 […] 遊ぶことは学ぶことです。

ブックマーク

参考図書

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はじめて学ぶ ビデオゲームの心理学 脳のはたらきとユーザー体験(UX)
セリア ホデント (著), 山根 信二 (監修), 成田 啓行 (翻訳)
福村出版 2022-12-13
単行本(ソフトカバー)
4571210450 (ASIN), 9784571210457 (EAN), 4571210450 (ISBN)
評価     

デジタル版が出そうもないので,諦めて紙の本を購入。ゲームデザイナやゲームエンジニアだけでなく,ソフトウェア・エンジニアは全員読むべき。あと,ゲーマーな人も読むといいよ。感想はこちら

reviewed by Spiegel on 2023-04-09 (powered by PA-APIv5)

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日経サイエンス2023年5月号(特集:対話するAI ChatGPT)
日経サイエンス編集部 (編集)
日経サイエンス 2023-03-25 (Release 2023-03-25)
雑誌
B0BXQ2HMQ5 (ASIN), 4910071150534 (EAN)
評価     

特集記事が「話す AI 描く AI」ということで,いわゆる Generative AI に関する内容。大規模言語モデル(LLM)の解説も載っている。圏論の記事もあるよ。

reviewed by Spiegel on 2023-03-28 (powered by PA-APIv5)

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賢者の弟子を名乗る賢者1 (GCノベルズ)
りゅうせんひろつぐ (著), 藤ちょこ (イラスト)
マイクロマガジン社 2014-06-30 (Release 2014-07-01)
Kindle版
B00LF90DZW (ASIN), 9784896374650 (EAN), 4896374657 (ISBN)
評価     

最近のお気に入りラノベ。 Web 版も愛読している。こういう設定のゲームとかあったら楽しいかなぁ。

reviewed by Spiegel on 2017-06-09 (powered by PA-APIv5)


  1. 親に無理やり入れさせられた。高校に入ったら一切運動部には関わらないという条件で渋々入った。テニス部を選んだのは一番楽そうに見えたからだ(←シロート考えw)。まぁ,それで身に着けた体力の余剰分でこの歳まで生き延びたんだから,そこだけは当時の親に感謝しておこう。今だに運動も体育会系のノリもまっぴらゴメンって感じだが。 ↩︎