“Copyleft Trolls” とたたかう 2023

no extension

最近すっかり疎遠になっている Twiter の TL を眺めてたら

という記事が紹介されていた。 つか CCjp ってまだ活動してるんだねぇ。 もう看板だけの組織だと思ってたよ(笑)

いわゆる “copyleft trolls” は1 CC licenses の古いバージョンに起因する不備をついたもので,2022年のはじめ頃に話題になったものだ。

1年以上前の話を今更? 選挙時期だし,ひょっとして何かの政治宣伝か? と思ったが,どうも最近になって本家 CC が出した

を受けてのものらしい。 CC licences 執行の3つの原則とは以下のとおり:

  • The primary goal of license enforcement should be getting reusers to comply with the license.
  • Legal action should be taken sparingly.
  • Enforcement may involve monetary compensation, but should not be a business model.
  • 再利用を行う者にライセンスを遵守してもらうことを、ライセンスの執行の第一の目的とすること
  • 法的な措置は頻繁に行われるべきではないこと
  • 金銭的補償をもたらす執行もあり得るが、それがビジネスモデルとなるべきではないこと

もう少し言うと「ライセンスの目的は(利用条件を遵守させることにより)知的コモンズを拡大することにあり,(違反を誘発して)お金を巻き上げるビジネスモデルであってはならない」ということだ。

“Copyleft trolls” の経緯と経過については Cory Doctorow さんが最近書かれた “Flickr to copyleft trolls: drop dead” が詳しい。 4月1日と明記されてたのでエイプリルフールを疑ったが,マジな記事なようだ(笑)

これによると Flickr のガイドラインに以下の文言が追加された。

Give some grace. When you choose to grant permission to your photos under any open license available on Flickr, we ask that you give the reuser a 30-day grace period to fix any possible mistake or misuse of your CC-licensed work with no penalty. Failure to allow a good faith reuser the opportunity to correct errors is against the intent of the license and not in line with the values of our community, and can result in your account being removed. If you use CC licenses, please understand that we support and adhere to the strategy for addressing license enforcement described in the Creative Commons’ Statement of Enforcement Principles.

これは上述した CC の「執行に関する原則」を受けてのものだね。 このガイドラインに違反する「トロル」な行為を受けた場合の報告手段も示されている。

Flickr は Yahoo! / Verizon 時代の「技術的負債」を返済するのに忙しく,なかなか前に進んでいないように見えるが

But what they have done is modify their policies to create a de facto CC 4.0 environment for their users, by promising to terminate the accounts of any user who repeatedly threatens legal action over bad attribution strings without first offering a 30-day grace period.

Flickr’s done more than that, actually. For one thing, they ditched Pixsy, severing their relationship with the company (Pixsy still lists them on its “partner” page). They also created the Flickr Foundation, a nonprofit devoted to providing long-term, responsible stewardship for their CC and public domain image respositories:

https://www.flickr.org/

とも書かれている。 Flickr Foundation については私も以前に紹介したので参考にどうぞ。

あとは Cory Doctorow さん自身が脅迫を受けた(?)話とか書かれていてなかなかに面白いので,ぜひ件の記事をご覧あれ。

Cory Doctorow さんといえば

という記事があって,その冒頭でいきなり

Here is how platforms die: first, they are good to their users; then they abuse their users to make things better for their business customers; finally, they abuse those business customers to claw back all the value for themselves. Then, they die.
プラットフォームはこのように滅びていく。まず、ユーザにとって良き存在になる。次に、ビジネス顧客にとって良き存在になるために、ユーザを虐げる。最後に、ビジネス顧客を虐げて、すべての価値を自分たちに向ける。そうして死んでいく。

とか書かれていて,あまりの納得感に思わず笑ってしまったのだが,「ビジネス顧客にとって良き存在になるために、ユーザを虐げる」をプラットフォームの第2フェーズとするなら, Flickr はこのフェーズへの移行をどうにか踏み留まっている状況か。 末永く踏み留まっていただきたいものである。

まぁ,なんちうか「文化の発展に寄与する」ってのは,こういう活動を指すんだよね,本来は! どこぞの文化庁やら文科省やら,あるいは某 Twitter とかに於いては,よくよく考えていただきたい。

ブックマーク

参考文献

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著作権は文化を発展させるのか: 人権と文化コモンズ
山田 奨治 (著)
人文書院 2021-07-29 (Release 2021-07-29)
Kindle版
B099RTG3J7 (ASIN)
評価     

著作権を「ユーザーの人権」という観点から捉え直す。その後 文化→コモンズ→文化コモンズ と進み,本当の意味で「文化の発展に寄与する」とはどういうことか考察していく。

reviewed by Spiegel on 2022-10-23 (powered by PA-APIv5)


  1. CC licences は厳密には copyleft ではないので「「コピーレフト・トロール」という言葉は問題があるよね(超意訳)」と yomoyomo さんも書いておられたが,すっかり定着してしまった感がある。 ↩︎