広告の曲がり角

no extension

広告最大の機能って「注目を奪う」ことなんだよね。 せっかく Web ページや動画コンテンツやゲームなどで上手く注目を制御していても,広告の見せ方や内容で台無しになることもある1

というわけで Mastodon 経由で見かけたポストがこれ。

私はガチの Firefox ユーザなので「へー, Chrome ユーザって大変なんだなぁ」くらいの感想しかないのだが,真面目な話をすれば論点は大きく2つあると思う。 すなわち

  1. 主要ブラウザに搭載されている拡張機能アドオンの仕組みがアドホックで脆弱
  2. Web 広告(動画サービスの広告等を含む)がハックの対象になっていて,ソーシャルエンジニアリングに対して脆弱

である。

そもそも広告ブロッカーはブラウザ拡張機能のアドホックさをハックしたものだ。

広告ブロックは、サードパーティのプリンターインクと同様に、現代史における最大の成功を収めた敵対的相互運用性の事例である。

一方で(昔見かけたやつだが)広告やマイニング・コードをブロックすると見せかけて別の広告やマイニング・コードを差し込んだりする悪質なものもあった。 広告ブロッカーではないが,最近見かけた記事でこんな話もある。

なので,最初に挙げたポストにある「Googleは「プライバシーとセキュリティーのため」と説明していますが…」という部分は多分その通りなんだろうなぁ,とは思う。 しらんけど。 でも,こうした悪用を防ぐために拡張機能をセキュリティやプライバシーの観点から締め上げていけば必然的に広告ブロッカーのような有用な機能も排除されていくわけで,その匙加減が結構難しい。 もっと言うと,拡張機能をどう制御するかというのは特定のブラウザに限る話ではないので,いずれ他のブラウザでも問題になってくると思う。

私が2番目の論点を意識するようになったのは2022年に書いたこの記事あたりから。

つまり「Web 広告がウザい」みたいな主観で語る季節は終わっているのである。 最近では

みたいな事例もあった。

Google は YouTube にて「アンチ広告ブロッカー」キャンペーン(?)を推し進めているみたいだが,動画に挟み込まれている広告の中には「どうみても詐欺やろ」みたいなのも多い。 もっとも YouTube に限るなら「Premium に入りなはれ」で済む話ではあるのだが2

意地の悪い見方をすれば,広告元締めでもある Google は自社の Chrome を利用し,セキュリティやプライバシーを「人質」にしてユーザの行動を統制・搾取した上で,別の危険な状態に晒そうとしている,なんてな言い草もできるわけで,こうしたことに反発が出ても当然と言える。 まぁ,かつて IE による市場統制への反発で Firefox が追い風になった経緯も考えれば,今回も「アンチ Google/Chrome」の象徴として Firefox という御輿を担ぐのもありかもしれない(笑)

注目を広告に乗っ取られることで本来意図した UX が崩れるのはブランドイメージの棄損だし,ましてや詐欺や Phishing の温床になるのはサイトオーナーとしては拙い事態だと思うんだけどねぇ。 それをユーザ側の「自己責任」と転嫁するなら「ダークパターン」と言ってしまっていいんじゃないだろうか。

そしてユーザたちは広告ブロッカーをインストールしてそれに抵抗する。広告ブロッカーは、広告主やパブリッシャにはっきりと「嫌だと言ったら?」と言い返すための手段なのだ。

ブックマーク

参考図書

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はじめて学ぶ ビデオゲームの心理学 脳のはたらきとユーザー体験(UX)
セリア ホデント (著), 山根 信二(監修) (著), 山根 信二 (翻訳), 成田 啓行 (翻訳)
福村出版 2022-12-15 (Release 2023-07-03)
Kindle版
B0C9Z7KGRN (ASIN)
評価     

Kindle 版が出ている。ゲームデザイナやゲームエンジニアだけでなく,ソフトウェア・エンジニアは全員読むべき。あと,ゲーマーな人も読むといいよ。感想はこちら

reviewed by Spiegel on 2023-11-21 (powered by PA-APIv5)

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ハッキング思考 強者はいかにしてルールを歪めるのか、それを正すにはどうしたらいいのか
ブルース・シュナイアー (著), 高橋 聡 (翻訳)
日経BP 2023-10-12 (Release 2023-10-12)
Kindle版
B0CK19L1HC (ASIN)
評価     

Kindle 版が出てた!

reviewed by Spiegel on 2023-11-21 (powered by PA-APIv5)

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スパム[spam]:インターネットのダークサイド
フィン・ブラントン (著), 生貝直人 (監修), 成原慧 (監修), 松浦俊輔 (翻訳)
河出書房新社 2015-12-25
単行本
430924744X (ASIN), 9784309247441 (EAN), 430924744X (ISBN)
評価     

とりあえず読みづらい。修飾語が多すぎるよ。ギリシア神話かっての。

reviewed by Spiegel on 2016-12-10 (powered by PA-APIv5)


  1. Web ページ上の広告 UX については結城浩さんの「個人ブログ記事の途中に挟まる広告に思うこと」に共感する。 ↩︎

  2. YouTube 有料版は広告カット機能に限定してもう少し安くならんのだろうか。抱き合わせ商法で高く売りつけるのは止めてほしい。 ↩︎