渡し守 hyuki さんによる『群論への第一歩』
今朝は放射冷却で氷点下まで下がったけど,よいお天気だったので,いつものように 八雲温泉でひとっ風呂 → 宍道湖・松江城定点観測 → 県立図書館で読書三昧 というコース。
まぁ,この辺は特筆するようなこともなかったのでさらっと流すとして,今回は最近読んでいる本の紹介など。
群論に至る智慧もしくは彼岸への渡し船
私は宗教関係者ではなく,うろ覚えで申し訳ないのだが,仏教用語の「般若(prajna)」は「悟りに至る智慧」みたいな意味らしい。 そこから転じて彼岸へ渡る渡し船のようなイメージができ,更に「船」から女性的なイメージができたみたいな話を聞いたことがある(真偽は不明)。
とするなら『群論への第一歩』は群論に至る智慧もしくは彼岸への渡し船と言っていいだろう。 それじゃあ著者の結城浩さんは,さしずめ彼岸(=群論)への渡し守かな(笑)
群論で挫折する人の話はたまに聞くが,私も例にもれず学生時代に群論に挫折した口でして。 いや「丸覚え」するなら単位は取れるのよ。 でもそれじゃあ理解したって言えないぢゃん。 それに暗記が壊滅的に苦手な私では,丸覚えしてもすぐ忘れるし。
まだ巡回群あたりを読んでいるところなのだが,この本を読んだ最初の感想は「学生時代に読みたかった orz
」である。
これって書籍版の「数学ガール」シリーズを読んだときにも思ったな。
授業で習う群論の何が難しいって,それまで刷り込まれた「読み書き算盤」をベースにした古典数学からのギャップを感じるからなんだよね。 んで「慣れる」前に授業としては終わってしまったりするの。 そして「日常生活で使うわけじゃないし,いっかぁ」みたいな感じで諦める。
でもね。 少なくともプログラマ(を目指す)なら群論もしくは群論の考え方は絶対に必要なのよ。 何故ならプログラミングは論理のコード化だから。 これは,この業界に入って歳をとるほどに痛切に感じるようになった。
何より(数学を含めた)理学とは「真理の探求」であり,それを駆動する好奇心こそが人たらしめるのよ。
読んでる途中なのに読書感想文
というわけで『群論への第一歩』の感想文。
ラノベ・漫画や軽い読み物ならともかく,こういう真面目な本は自宅だと(他に目移りするものが沢山あるので)なかなか読み進められないのね。 なので,週末の図書館の学習室とかでチマチマと読んでたりする。
前述したように群論に「慣れる」には,如何にして「読み書き算盤」の此岸からスムーズに渡って行けるかにかかっている。 その点で『群論への第一歩』は抜群に上手いと思う。
他の『プログラマの数学』や『暗号技術入門』にはなかったと思うんだけど「ちょっと一言」というミニコラムみたいなものがかなりの頻度で(しかも煩くない程度に)差し込まれているのね。 ミニコラムというか著者によるミニブログみたいな感じ。 こういうのって今風だなぁと思ったのだが,どうだろう。
あと,結城浩さんの他の著書と同じく,この本でも章ごとに演習問題(と解答&解説)が載ってるんだけど,演習だからとうっかり読み飛ばしたりすると,後の章に
とか書いてあって「おぅふ」となり慌ててページを戻ったり。
実に鬼畜上手い。
まぁ,これで演習問題も丁寧に読もうという気になるんだけどね。
これを読めば富士山の5合目くらいの高さまでは行けるだろうか。 仕事と違って締切はないので,ゆっくり読み込んでいくことにしよう。
参考
- 群論への第一歩 集合、写像から準同型定理まで
- 結城 浩 (著)
- SBクリエイティブ 2024-03-02 (Release 2024-03-02)
- Kindle版
- B0CR18XWZW (ASIN)
- 評価
タイトルにあるように「群論」へ至る道を指し示す良書。学生時代に読みたかった orz
- プログラマの数学 第2版
- 結城 浩 (著)
- SBクリエイティブ 2018-01-16 (Release 2018-02-08)
- Kindle版
- B079JLW5YN (ASIN)
- 評価
タイトル通りプログラマ必読書。第2版では機械学習に関する章が付録に追加された。
- 暗号技術入門 第3版 秘密の国のアリス
- 結城 浩 (著)
- SBクリエイティブ 2015-08-25 (Release 2015-09-17)
- Kindle版
- B015643CPE (ASIN)
- 評価
SHA-3 や Bitcoin/Blockchain など新しい知見や技術要素を大幅追加。暗号技術を使うだけならこれ1冊でとりあえず無問題。