𝕏 のアルゴリズムは「怒り」を増幅する?
例によって Mastodon/Bluesky の自 TL に流れてきたポストから。 前回の記事も 404 Media が元ネタだったなぁ。 そろそろちゃんとアカウントを作ったほうがいいかしらん。
- X's Algorithm Feeds Off Ragebait and Impacts Democrats More, Study Finds
- X is driving engagement by making users fight in the replies.
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PNAS (Proceedings of the National Academy of Sciences) に掲載された論文の紹介記事で,簡単にいうと 𝕏 の「おすすめ(For You)」タイムラインのアルゴリズムは,ユーザの見たいポストではなく,怒りや反感を煽る ragebait なポストを優先して表示する傾向があり,怒りによってエンゲージメントを高めている,という内容らしい。
ベースになっている論文がこれ。
オープンアクセスになっていて PDF/EPUB 版をダウンロードできる。 詳細に読むのは大変なので Kagi Assistant に手伝ってもらいながら軽く内容を紹介すると
研究者は,2024年9月から10月にかけて,米国のX利用者715人を対象に調査しました。参加者は人種,性別,党派性について米国全体の構成に近くなるよう割り当てられ,ブラウザー拡張機能を使って,次のデータを提供しました。
| 分析対象 | 内容 |
|---|---|
| 利用者の価値観 | アンケートで自己申告した価値観 |
| フォロー中フィード | 利用者がフォローしているアカウントの投稿 |
| おすすめフィード | Xのアルゴリズムが選び,順位付けした投稿 |
| エンゲージメント | いいね,リポスト,返信などの反応 |
投稿の内容は,シュワルツの「基本的人間価値理論」に基づいて分析されました。この理論では,たとえば「伝統」「社会の安全」「規則への同調」「他者への配慮」「自然の保護」「変化への開放性」など,19種類の価値を扱います。
「フォロー中」の TL はユーザの(自身で申告した)価値観が比較的反映されているのに対し,「おすすめ」の TL はユーザの価値観とは負の相関を示したそうな。 つまり「おすすめ」では,ユーザが本来重視している価値とは反対方向の価値を示すポストが目立ちやすくなっていたことを意味する。
また 𝕏 では「いいね」より返信(の量)のほうが評価されるアルゴリズムになっているそうで,どういうことかというと,ツッコミ返信が多いポストほど「おすすめ」に載りやすいということらしい。 久しぶりに「ツッコミビリティ」というフレーズを思い出したよ(笑)
最近ではこういった相手を怒らせたり反発を誘発するようなポストを “ragebait” と呼ぶそうで, 𝕏 の「おすすめ」アルゴリズムは ragebait と相性がよく,さらに ragebait を引き寄せる構造になっているようだ。
論文が面白いのはここからで,ユーザの党派性(共和党支持者か民主党支持者か)によって「おすすめ」アルゴリズムの影響が異なるらしい。
アルゴリズムが増幅する投稿は,民主党支持者と共和党支持者の双方にとって,自己申告した価値観と負の相関を示しました。
しかし,そのずれは民主党支持者のほうが大きく,論文では次の平均相関を報告しています。
| 利用者の政治的自己認識 | おすすめによる増幅と本人の価値観との相関 |
|---|---|
| 民主党支持者 | −0.229 |
| 共和党支持者 | −0.041 |
再現研究でも,民主党支持者では負の相関が確認され,共和党支持者では小さいながら正の相関が確認されました。
また,返信と価値観との関係も異なり,民主党支持者では平均−0.0702,共和党支持者では0.056でした。研究者は,民主党支持者が自分の価値観と合わない投稿に返信することで,そのような投稿をさらに受け取る循環に入りやすい可能性を示しています。
民主党支持者で何故ずれが大きいのかについて論文では確定的に述べてはいないようだ。 ただし,ポストに対する反応として民主党支持者は,自分の価値観と合わないポストに対して積極的に返信する傾向があるそうな。 民主党支持者にはツッコまずにはいられない人が多いってことかね(笑)
Kagi Assistant は 404 Media の記事をこうまとめてくれた。
この記事が問題視しているのは,Xのアルゴリズムが「利用者が本当に読みたい情報」ではなく,「利用者が強く反応する情報」を優先している点です。怒りや嫌悪による返信もエンゲージメントとして計測されるため,利用者は自分が反対する投稿を何度も見せられ,それに反応するほど,さらに同じ種類の投稿を受け取ることになります。
その結果,Xのタイムラインは利用者の価値観を反映する場というより,怒りや対立を生みやすい投稿が増幅される場になり得ます。記事は,こうした仕組みが政治的分断やオンライン上の敵対意識を強める可能性を指摘しています。もっとも,この研究は主に観察に基づくものであり,アルゴリズムが政治的態度を直接変化させたと証明したものではありません。
個人的には,旧 Twitter で「おすすめ」が登場した当初から全くこれを利用してないので「ふーん」という感想しかないが,改めて恣意的な「アルゴリズム」の危うさが浮き彫りになった感じではある。 特に,一言で「エンゲージメント」といっても評価の仕方でここまで変わるのか,というのは面白い。
株主の皆様におかれましてはソーシャルメディアの評価の仕方について根本的に考え直したほうがいいんじゃないだろうか。 そして,私たちユーザ側から見て,やっぱり「おすすめ」は碌なもんじゃないということがよく分かった記事であった。
やっぱ 𝕏 からは足を洗ったほうがいいのかねぇ。
