GitHub Copilot は貢献者から貢献を奪うか?

no extension

この前から話題になっている GitHub Copilot だが,ついに SFC (Software Freedom Conservancy) が GitHub と敵対する? 声明を出したようだ。

引き合いに出された SourceForge に佐渡秀治さんが反応して

と tweet しておられるのが面白かった。

私が今回の一連を見て最初に連想したのは,ゼロ年代の Google Book Search だったのだが

これとはちょっと違うなとは思っていた。 うまく言語化できないが,つらつらと書いてみる。

Pekka Himanen 等による古典 “The Hacker Ethic” (邦題『リナックスの革命』) を引くまでもなく FOSS でコードを書く人にとって最も価値があるのは「自由なコード」であり,その FOSS プロジェクトにコミットする人々にとって一番の報酬はコード(=自由)に「貢献」したという事実そのものである。

にも関わらず GitHub Copilot はコードに付随する貢献を洗い落としてしまう。 貢献を洗い落とされたコードは「GitHub Copilot のもの」としてしれっと使われる。 上の tweet の retweet 元にもあるように,これは2010年代で散々言われた「あなたが客でないとすれば、商品だ」という搾取の構造と言える。

言うなれば「コード洗浄 (ロンダリング) 」といったところだろうか。 上手いフレーズを思いつかなくてゴメン 🙇

そう考えると

One recent preliminary finding was that AI-assisted software development tools can be constructed in a way that by-default respects FOSS licenses. We will continue to support the committee as they explore that idea further, and, with their help, we are actively monitoring this novel area of research. While Microsoft’s GitHub was the first mover in this area, by way of comparison, early reports suggest that Amazon’s new CodeWhisperer system (also launched last week) seeks to provide proper attribution and licensing information for code suggestions.

Software Freedom Conservancyの委員会はAI支援ソフトウェア開発ツールに関する調査を続けていると説明するとともに、FOSSライセンスを尊重する形でこうした機能を実現することは可能であることが最近の調査からわかったことなどにも言及している。

同委員会は今後もこの分野への取り組みを続けるとしているほか、Amazon CodeWhispererのようにコード提案時に適切な帰属とライセンス情報を表示しようとする取り組みがあることについても説明している。

というのもライセンス処理の問題だけではないと思えてくる。

GitHub をはじめとするサービスは単なる「git リポジトリ・サービス」ではなく,コードを中心としたコミュニティを構成し貢献を可視化するプラットフォームとして機能している。 このことを軽視してはいけないと思う。

私は GitHub にはかなりお世話になってるが,この件を拗らせるようなら(乗り換えまではしなくても)プロアカウント契約を解除することも考えないといけないだろう。

【おまけ1】 GitHub Copilot は Fair Use か

元コードのライセンスを無視してどんぶり勘定する GitHub Copilot が fair use かどうかについては微妙だと思う。 まぁ「公正な利用」の概念がない日本では一発アウトだろうが(笑)

先に紹介した Google Book Search の件や2021年まで争われていた Google vs Oracle の訴訟を見ても分かるように,あるサービスによる知財の取り扱いが fair use に基づいているか判断するのは難しい。 というか米国の場合,訴訟が始まってからがスタートラインなんだよな。

訴訟が始まって GitHub やその親玉である Microsoft が FOSS コードやその貢献についてどのように考えているか明らかになれば,もっと色々と語ることがあるかも知れない。

【おまけ2】目的によって利用を制限するのであればそれはもう FOSS ではない

ゼロ年代に 9.11 から始まる一連のテロや戦争のときもそうだったし,2022年のロシアがウクライナに仕掛けた侵略戦争勃発時にも見られたが,抗議目的でソフトウェアの(著作権的な意味での)利用を制限することは FOSS の目的や手段にマッチしない。 「自由とはそういうことだ」

たとえば,今回の GitHub Copilot に抗議・拒否する目的で既出の FOSS 製品の利用を制限したいのであれば「FOSS でないなにか」に変更しなければならない。 それは今まで積み上げてきたエコシステムの基盤を崩すことになる。

GitHub Copilot には反対するけど今のエコシステムを壊したくないなら SFC が言うように「GitHub をあきらめる(give up GitHub)」しかない。 それとも(今まで積み上げてきたものを壊してでも)断固とした対決姿勢をとるか。 「リポジトリに Copilot 拒否オプションを付ければいいぢゃん」とかいった簡単な話ではないのである。

さて,どうなる? どうする?

ブックマーク

参考図書

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リナックスの革命 ― ハッカー倫理とネット社会の精神
ペッカ ヒマネン (著), リーナス トーバルズ (著), マニュエル カステル (著), 安原 和見 (翻訳), 山形 浩生 (翻訳)
河出書房新社 2001-05-26
単行本
4309242456 (ASIN), 9784309242453 (EAN), 4309242456 (ISBN)
評価     

大昔に買ったんだけどうろ覚え。買い直そうかと思ったが邦訳は Kindle ではないのか。それにしても「リナックスの革命」とかいう頭の悪いタイトルはどうにかならなかったのだろうか。副題だけで十分ぢゃん。

reviewed by Spiegel on 2020-12-12 (powered by PA-APIv5)

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伽藍とバザール
原題: The Cathedral and the Bazaar
レイモンド エリック, 山形 浩生 (翻訳)
1999-04-16 (Release 2014-09-17)
青空文庫
227 (図書カードNo.)
評価     

プロジェクト杉田玄白 正式参加作品。翻訳者のページも参照のこと。今となっては古典だけどねぇ。

reviewed by Spiegel on 2022-10-18 (powered by aozorahack)

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夏をあきらめて
サザンオールスターズ (メインアーティスト)
TAISHITA 1998-06-25 (Release 2018-08-06)
MP3 ダウンロード
B07FMV7HMD (ASIN)
評価     

カラオケでよく唄うやつ。原由子バージョンが好き。

reviewed by Spiegel on 2022-07-03 (powered by PA-APIv5)