いまさら「安全なメッセージング・アプリ」
Twitter TL を眺めてたら Mastodon で Direct Messages on Mastodon are NOT encrypted
みたいなのが流れてるんだそうで,そもそも Twitter の DM だって安全じゃないし,複数のサーバが分散している Mastodon なら尚更だと思うのだが,世の中の認識はどんな感じなのだろう。
大昔のカビの生えた記事で申し訳ないが,2014年に EFF が “Secure Messaging Scorecard” という記事を公開していて,この中で「安全なメッセージング・アプリ」の7項目を挙げている。 曰く
- Encrypted in transit?
- Encrypted so the provider can’t read it?
- Can you verify contacts’ identities?
- Are past comms secure if your keys are stolen?
- Is the code open to independent review?
- Is security design properly documented?
- Has there been any recent code audit?
である。 当時は私も便乗記事を書いていたが,その後 EFF は記事をいったん引っ込めている。 現在,跡地として残っている記事には
と但し書きがされているのでご注意を。 ただ,まぁ,上に挙げた7項目は「安全なメッセージング・アプリ」を実現するための最低限の条件と言っていいだろう。
Twitter や Mastodon の DM は電子メール・システムに近い。 ユーザ間を直接的に繋ぐ通信ではなく,最低ひとつのサーバにメッセージが保持され,サービス・プロバイダ側の「なにか」がそのメッセージを見ることは(技術的には)可能である。 簡単に言うと,これらは「はがき」と同程度に「検閲可能」なのだ。
安全を確保するためのやり方は色々ある。 たとえば,電子メールでは S/MIME や PGP/MIME といった仕組みでメッセージ本文を暗号化できる。 今は廃れているかもしれないが,かつて Jabber とよばれた XMPP 方式のインスタント・メッセージング・サービスは OTR (Off-the-Recording) を組み込むことで,上述の7項目を満たすことに成功した。
個人的には Signal を推す。 上の “Secure Messaging Scorecard” 跡地で紹介されている “Surveillance Self-Defense” でもメッセージング・アプリとして Signal と OTR と WhatsApp が紹介されている。
とはいうものの,8年前の記事でも書いたが,結局メッセージング・アプリで一番大事なのは「相手がいること」なのよね。 一応 Signal は入れてるんだよ。 誰も遊んでくれないけど(笑) 仕事では Microsoft Teams を使ってるし,広島の友人との連絡は Facebook Messenger だし,家族との連絡は電話かキャリアメールだ。 まぁ LINE は今だに毛嫌いしてるので,知り合いから「LINE 入れないの?」と言われても頑なに断ってるけど。
というわけで,私から「Signal を入れよう」と持ちかけてもいぢめないであげてください。
ブックマーク
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メッセージングアプリSignalが暗号化で妥協しない理由を新プレジデントが語る - YAMDAS現更新履歴 : ちなみにこの記事で Signal の送金機能の話が出ているが,ベータ機能として組み込まれている。私は有効にしてないけど
参考文献
- 超監視社会
- ブルース・シュナイアー (著), 池村 千秋 (翻訳)
- 草思社 2016-12-13 (Release 2017-02-03)
- Kindle版
- B01MZGVHOA (ASIN)
実は積ん読のまま読んでない。そろそろちゃんと最後まで読まないと。
- 暗号化 プライバシーを救った反乱者たち
- スティーブン・レビー (著), 斉藤 隆央 (翻訳)
- 紀伊國屋書店 2002-02-16
- 単行本
- 4314009071 (ASIN), 9784314009072 (EAN), 4314009071 (ISBN)
- 評価
20世紀末,暗号技術の世界で何があったのか。知りたかったらこちらを読むべし!