Flickr は監視資本主義に向かわない

no extension

いやぁ「はやぶさ2」タッチダウン成功に続いて嬉しいニュースかも。

Flickr は現在 CC Licenses 下で公開している写真について削除をしないことに決めたようだ。 これは現在アップされている写真のみならず,これからアップされる写真にも適用される。

we’re going further and now protecting all public, freely licensed images on Flickr, regardless of the date they were uploaded. We want to make sure we preserve these works and further the value of the licenses for our community and for anyone who might benefit from them.

これに関連して Free アカウントでライセンスの一括変更ツールが使えなくなるようだ。

In conjunction with this announcement, we’ve disabled bulk license change tools in the Settings, the Camera Roll, and the Organizr for Flickr Free accounts. We’ve done this to prevent community members from flipping all their images to a new license without first understanding the significant implications of the various free licenses we support. Any member (Free or Pro) can still change the license of any of their photos on the photo page.

まぁ,これはしょうがない。 写真を削除されないためだけに CC Licenses を設定するのは本末転倒だし,それで後にトラブルが発生しても「知らんがな」って感じだものねぇ。 一括変更ができないだけで普通に CC Licenses を設定するのはこれまで通りできるみたいなので問題ないだろう。

Flickr のこの決定に対して Creative Commons は以下のように文章を寄せている。

we’ve seen how unsustainable and exploitative free models can be, and I’m glad that Flickr hasn’t turned to surveillance capitalism as the business model for its sustainability plan – but that does mean they’ll have to explore other options.

そして更にこう続く。

Choosing to allow all CC-licensed and public domain works to be uploaded and shared without restrictions or limits comes at a real financial cost to Flickr, which is paid in part by their Pro users. We believe that it’s a valuable investment in the global community of free culture and open knowledge, and it’s a gift to everyone. We’re grateful for the ongoing investment and enthusiasm from the entire Flickr team, and their commitment to support users who choose to share their works.

いや,もうね,死んだと思っていた Flickr がここまでのガッツを見せてくれたのなら,元 Pro ユーザとして応えないわけにはいかないだろう。

というわけで払い込みましたよ 59.88 USD ほど1

私は Flickr が今の姿勢を貫く限り,そして私のささやかな財力と残り少ない寿命が続く限り Pro ユーザを継続することをここに宣言する。

コモンズは「空き地」でも「余白」でもない

そういえば以前書いた『続・情報共有の未来』の感想文で私はこう書いた。

私が考えるに,インターネット・ユーザに要求される唯一のルールは「インターネットに参加する」ことであり,そこに付随するコストとリスクと責任を(手の届く範囲で)引き受けることである。インターネットは(コンビニとかでw)買うものではなく,作る(make)ものだ。

今後の Flickr はまさにユーザが「参加」するプラットフォームあるいはメディアになりうる期待感がある。

一方『法のデザイン』を著された CCjp 理事の水野祐さんは著書の中でコモンズを「法的な余白」であると書かれている。 しかし,今回の Flickr の苦悩を見れば分かるようにコモンズを「持続」させるにはそれなりのコストとリスクと責任が伴う。 それを「参加者」全員が少しずつ引き受けていくからこそコモンズはコモンズたり得るのである。 そのためには明示的な “CODE” を組む必要がある2

誤解のないようにあらかじめ言っておくが,これは「Flickr を利用するならお金を払うべき」と言っているのではない。 オープンソース・プロジェクトでも同じだが,人によってできることは違うのだから,それぞれ手の届く範囲でコモンズに「参加」していけばいいのである。

それに今は何も貢献 (contribute) できることがなくても将来は何か出来ることがあるかもしれないじゃないか。 その期待感を「発酵」させていくことがコモンズを構成することの意義であり,単なる sustainability から generativity へと昇華させる鍵になるのではないだろうか。

参考図書

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もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来
yomoyomo (著)
達人出版会 2017-12-25 (Release 2019-03-02)
デジタル書籍
infoshare2 (tatsu-zine.com)
評価     

WirelessWire News 連載の書籍化。感想はこちら。祝 Kindle 化

reviewed by Spiegel on 2018-12-31

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CODE VERSION 2.0
ローレンス・レッシグ (著), 山形浩生 (翻訳)
翔泳社 2007-12-19 (Release 2016-03-14)
Kindle版
B01CYDGUV8 (ASIN)
評価     

前著『CODE』改訂版。

reviewed by Spiegel on 2018-11-17 (powered by PA-APIv5)

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フリーカルチャーをつくるためのガイドブック クリエイティブ・コモンズによる創造の循環
ドミニク・チェン (著)
フィルムアート社 2012-05-25
単行本
4845911744 (ASIN), 9784845911745 (EAN), 4845911744 (ISBN)
評価     

国内における Free Culture の事例が豊富。取っ掛かりとしてはちょうどよい本。

reviewed by Spiegel on 2015-05-07 (powered by PA-APIv5)


  1. 月額 6.99 USD のコースもある。支払いには各種クレジットカードのほか PayPal も利用できる。 ↩︎

  2. 先日紹介した『続・情報共有の未来』の付録の中で引用されていたローレンス・レッシグ氏の「自由や匿名性はコードや物理世界の不完全性に依存しているので、自由を守るためにこそ人は適切な政府の規制を要求しなければならない」という言葉を今更ながら痛感する。これは法的コードのみならずアーキテクチャ・コードに於いても同じで,正しいアーキテクチャ・コードを組むことがいかに難しいか考えさせられる。 ↩︎