FinTech の曲がり角

no extension

2週間以上前の記事で恐縮だが Signal がいわゆる暗号通貨(cryptocurrency)機能を組み込むらしい。

実はこの話はほぼスルーしていたのだが yomoyomo さんの記事を見て,やはり「ログ」として残しておくのがいいだろうという気分になった。

この問題は Bruce Schneier 先生の以下の一文に集約できるだろう。

It’s that adding a cryptocurrency to an end-to-end encrypted app muddies the morality of the product, and invites all sorts of government investigative and regulatory meddling: by the IRS, the SEC, FinCEN, and probably the FBI.

日本語でいうと「藪をつついて蛇を出す」。 個人的な印象で恐縮だが,信頼できる暗号化メッセージング・アプリケーションはもはや Signal が唯一と思っているので,マジで勘弁していただきたいところである。 そんなもん入れられるくらいなら普通に Signal に金を払うよ1

そもそも2018年に G20 が「それ」を暗号資産(crypto-assets)と定義した時点で,私の中では「試合終了」だったのよ2。 最近では「通貨」機能は諦めたのか NFT (Non-Fungible Token) が流行りらしいが, Xanadu 未満の駄アイデアにしか見えない。 追記型データベースとしての Blockchain も意外に使い道がなく,むしろ「環境にやさしくない」とか言われているし(笑)

いずれにしろデジタル・トークンを「通貨」とみなして流通させる季節はとっくに終わってるわけで,あとは「資産」としてのデジタル・トークンの運用で一山当てようという山師的な発想しか見えてこない。

デジタル・トークンの「資産運用」を全面否定するつもりはないが(私は関わりたくないが), Signal のようなセキュリティまたはプライバシー上のクリティカル・サービスで山師的機能を付加する動きについては,今後は厳しく監視していく必要があるかもしれない。

ブックマーク

参考図書

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暗号化 プライバシーを救った反乱者たち
スティーブン・レビー (著), 斉藤 隆央 (翻訳)
紀伊國屋書店 2002-02-16
単行本
4314009071 (ASIN), 9784314009072 (EAN), 4314009071 (ISBN)
評価     

20世紀末,暗号技術の世界で何があったのか。知りたかったらこちらを読むべし!

reviewed by Spiegel on 2015-03-09 (powered by PA-APIv5)


  1. 無料 (ただ) ほど高い「安心安全」はない。 ↩︎

  2. 何故 G20 が「暗号資産」と定義したか考えて欲しい。通貨としての信頼と安定がないからだよ。 ↩︎